角猫一族

 

ジンジャーたちはキャンプの入り口まで来た。さすがにグリフィンももう立ち直っていた。ありがたい。

 

「着きましたよ。ここが俺たちの家です。」

「ほう、ここが・・・。」

 

イラクサで周りが囲まれている。その壁に一か所だけ、穴がある。

 

「あのトンネルを通ればキャンプに入れます。ただし、トンネルを抜けた後、あまり横道にそれないでください。水をためた堀がありますから。」

 

「な~に、心配いらないさ。俺がイラクサの上を飛んでけばいい。」

 

グリフィンが羽を広げようとしたが、ジンジャーが制止した。

 

「だめです。あぶないですから!」

 

グリフィンが頭にはてなマークを浮かべてなにが?と聞こうとすると、茂みのトンネルから誰かが出てきた。

 

「一体何の騒ぎだ?」

 

「っ、バレット・・・。」

 

「ジンジャー、瞑想もいいがいいかげん俺に見張りを押し付けるな。」

 

バレットと呼ばれた青い雄猫は、不愛想のままジンジャーに文句を言った。

 

「そして、こいつは誰だ?」

 

グリフィンに向き直るなり、敵意をむき出しにしてにらみつけす。

 

「まってくれ!彼は敵じゃない。俺の命の恩人なんだ。」

 

ジンジャーが慌てて間に入るがバレットはやめない。

 

「信用しろだと?こいつにの背中を見ろ。奴らのスパイの可能性だってある。」

「奴ら?スパイ?なんのことだ?」

「バレット。彼は奴等とは関係ないよ。彼は旅猫。町に行くつもりが風で流されたらしい。」

 

「・・・証拠は?」

「それは・・・。」

「おいっ!人をおいて話を進めるな。なんなんだよ奴らって。」

「奴らっていうのは・・・。」

 

その時だ。もう一匹、白に青い縞模様の雌猫が飛び込んできた。興奮していてグリフィンには気付いていないようだ。

 

「敵襲よ!ジンジャー!バレット!急いでキャンプに戻って!」

「任務了解。この件はターゲットを撃破した後だ。」

 

バレットはグリフィンを一瞥した後、キャンプに戻っていく。

 

「グリフィン、ごめん。待ってて。」

ジンジャーも後に続いた。

 

 

「ひどいな。」

 

キャンプもあらゆるところで戦いが起きている。

ジンジャーは素早くそこに飛び込み、敵を片っ端から殴り倒した。

近くでバレットが角で敵を投げ飛ばしており、姉のカモミールが足払いをかけている。

 

「はっ!せいっ!たあっ!」

ビシッ!バキッ!ドカ!

 

ジンジャーは流れるように敵を倒していく。

「・・・はっ!」

 

攻防の途中、直感で敵の攻撃を回避した。刹那、見えない何かが空を切っていく。

 

「この技・・・ケートスか!」

 

(敵の副長自ら出陣しているのか・・・!)

 

はるか遠距離、再び超音波の矢を放とうとするケートスが見えた。その時、

「やらせるかよ!」

 

一つの黒い影が舞い降り、ケートスを蹴り飛ばした。そいつはそのままジンジャーの近くに降り立ち、戦い始める。

 

「グリフィン!なんで・・・。」

「知り合いが戦ってるのに何もせずにいろってのか?」

「・・・ありがとう。気をつけて。」

 

二匹は敵に向かっていった。

 

 

数十分後

「・・・応援感謝する。だが君は何者かな?」

角猫一族の族長、ジンジャーの父でもある猫、リーフはグリフィンを問いただした。

 

「俺はグリフィン。世界を旅するさすらいの翼猫。」

「父さん。彼は二度も俺のピンチを救ってくれました。」

「ふむ、ではなぜ君はこの山に来た?そしてどこから来た?」

「俺は本当は町に行くつもりだったんだ。だが、なにぶん風が強い日だったんで流されちまったのさ。  ・・・・・・どこから来たかは、俺もわからん。」

 

「・・・どういう意味だ?」

バレットが無表情で尋ねる。

 

「記憶喪失ってやつさ。旅を始める前のことはさっぱりだ。」

グリフィンが、参ったという感じで答える。

「・・・族長、ご決断を。」

 

「父さんっ!」

「いい。ジンジャー。息子を助けてもらった恩は返さねば。」

「グリフィンといったな。角猫一族族長として礼を言おう。今日はゆっくり休むがいい。」

 

すぐに近くの見習いに敷物を手配させる。

「グリフィン!」

「ああ、ジンジャー。助言どうも。」

「ああ。いいんですよ。それよりついてきてください。寝床、わかんないでしょ?」

 

「ふっ、できれば、綺麗な雌猫の隣がいいな。」

 

「・・・殺されますよ。」

「物騒だな!?オイッ!?」

「変な下心を出さなければ大丈夫ですよ。」

「あっ!てめっ!ひとを変態扱いしやがって!」

「ははは!冗談はさておき行きますよ。」

 

途中、バレットとすれ違ったが彼は何も言わなかった。

「俺、歓迎されてないみたいだな。」

「ふふ、バレットはたいていあんな顔ですよ。それに、大丈夫。実力があるものは認める人ですから。」

「実力・・・ねぇ。」

 

二匹は雑談をしながら戦士部屋に向かっていった。