最終決戦後編

「ふふふふふ。」

 

レギオンだったものは無邪気な笑みとともに迫ってくる。オーラは先ほどの倍近い勢いで出ており、思わず後ずさりしそうだ。

 

「ほら!」

 

敵が火炎弾を飛ばしてきた。かわせない!

 

「ジンジャー!」

 

グリフィンが身を投げ出して、迫る火炎から彼を助けた。

 

「グリフィン!」

 

「何もんだお前・・・。」

 

グリフィンは相手をきつくにらみつけながら問う。

 

「僕?僕はレギオンで、君達さ。」

 

「?どういう意味だ!?」

 

「僕はこの入れ物でもあり君達でもあるって意味だよ。」

 

「お前は・・・まさか!」

 

ジンジャーの疑問は的中する。

 

「そう。僕はエクシードの力そのものさ。」

 

「こいつは僕を使いこなしてるつもりだったみたいだけど。ホントは逆。僕が完全になるためにちょっとずつ干渉してただけなのさ。」

 

「兄さんに力を貸すつもりをして逆に体を乗っ取ったのか!?」

 

やはり!声は違うがこいつはあの時夢に出てきたあいつだ!自分やグリフィンもああなってしまうかもしれなかったのか!

 

「そうだよ。これで思う存分遊べるね!!」

 

少し大きめの火炎弾が現れ、破裂する。

 

「「うわぁぁ!!」」

 

ジンジャーとグリフィンは雪の中を転がって止まった。

 

「こいつは予想外の事態だな・・・。」

 

「奴から兄さんを助けないと!」

 

二人はエクシード化し、力の化身に向かっていく。

だが、

 

「なっ・・・!?」

 

「うわ・・・!?」

 

化身が発した念力に捕らえられてしまった。

 

「無駄だよ。エクシードにもレベルがあってね。完全体である僕に第一覚醒しただけの君たちじゃ勝てないよ!」

 

化身は二匹を空中で大きく振り回した後地面にたたき付けた。それだけで二匹の変身も解けてしまう。

 

「ぐ、・・・う・・・。」

 

「うぐ・・・ぁ。」

 

(く、・・・カモミール、こいつのジンジャーの夢と命を守るためだ・・・俺に力を!)

 

(負けられない。皆の運命は俺にかかってるんだ!)

 

「行くぜ、相棒。」

 

「ええ、みんなの未来を、守るために!」

 

「「さぁて、往生しな!」」

 

敵が無数の火炎弾を打ってくる。グリフィンは水の盾でそれを防ぎ、ジンジャーは第二形態になって、炎をかいくぐってパンチを入れる。

 

「ふふふ、そうそう!一発は入れてくれないとね!」

 

化身は笑いながらジンジャーにつかみかかる。

 

(く、なんて力だ!この姿で振りほどけない!)

 

化身はジンジャーを振り回して放り投げた後、立とうとした彼に蹴りを入れる。

 

「ジンジャー!」

 

グリフィンが炎をまとったエクシードドロップキックを放つが、相手は同じく炎をまとった片腕ではじき返した。

 

「ぐぁ!!」

 

「グリフィン!!」

 

「ほぉら、じっとしてなよ。」

 

立ち上がろうとしたグリフィンが地面に伏せた。念力で押さえつけられているのだ。

 

「君とはそろそろお別れだね。」

 

「くっ!」

 

化身の左手がスパークし、黒い重力波が打ち出される。

 

「うお!・・・おおおお!!」

 

ジンジャーはシールドで止めたものの、出力の差で今にも突破され、押しつぶされそうだ。

 

「力こそすべて。強いものが弱者を糧にのし上がる。君はここでゲームオーバーだよ♪」

 

出力がさらに上がる。だがジンジャーは相手をにらんでいった。

 

 

「違う!!力は、弱いものを守るため、いや!」

「強いものも、弱いものも守るためにあるんだ!!!」

 

ジンジャーが力を込めて、シールドごと波動を弾く。

それと同時に、

 

ピキィン!!コォォォォォ!!!

 

ジンジャーの体が光り輝き、新たな姿に変わった。

 

基本的に第一形態に似ているが、角は枝分かれして十手の様な四本角になり、

顔に血の涙を流したような赤いラインが入り、肋骨を思わせる銀のラインが三本、胴に入った。オーラの出が倍になったその姿。

 

一見悪魔的で恐ろしいが、瞳は変わらず闇を照らしている。

 

「なにっ!?」

 

「・・・・・・・。」

 

「そんな馬鹿な!この短期間で第二覚醒が、・・・完全体になれるはずがない!」

 

「まだ分かってねぇようだな。」

 

グリフィンが言った。

 

「力ってのは、自分の手で勝ち取るもの。こいつ自身が強くなったから、力が答えたんだ!」

 

「っ!ふ、ふんっ!・・・まだ僕が負けたわけじゃない!」

 

化身が腕から稲妻を放つ。

 

「はぁぁぁぁ!!」

 

だがジンジャーは電磁バリアを張ってそれをはじく。

 

「!、ハァァ!!」

 

今度は氷の散弾を撃ってくるが、

 

「おぉぉぉぉ・・・はぁ!!」

 

ジンジャーは突き出した両腕から凄まじい熱と光を放って、散弾を消滅させた。と、同時に、

 

「うぁぁぁぁ!」

 

化身にもダメージを与える。

 

「行くぞジンジャー!」

 

グリフィンがボロボロの体を引きづって隣に立つ。

 

「ええ、兄さんの体を返してもらいます!」

 

二匹は腕をクロスさせると、そのまま前へ押し出し、光を発する。

 

二匹のオーラを直接浴びせているのだ。ただし、それは殺意ではなく、レギオンの意識に呼び掛けるものである。

 

「や、やめろ、・・・お前は出てくるな・・・!まだ遊び足りないのに・・・うわぁぁぁぁ!!!」

 

化身が絶叫を上げ身をよじり、そして・・・。

 

「はぁ、はぁ、はぁ。」

 

「兄さん・・・。」

 

「すまない、・・・ジンジャー。」

 

レギオンが、戻ってきた。

 

 

 

「ジンジャーは勝ったのか?」

 

部族の一匹が言った。バレットは空を見上げて言った。

 

「ああ。空が晴れている。・・・勝利の青空だ・・・!!」

 

バレットの鉄仮面な顔に、安堵の笑みが浮かんでいた。