その瞳に強き意思を

 

ザシュ!!!

 

「任務完了。」

 

今、一匹のキツネが切り殺された。

 

「バレット何も殺さなくても・・・。」

「また来ないとも限らん。今、この戦況で子猫を失うわけにはいかないからな。」

 

このキツネは夜中にキャンプに忍び込み、保育部屋を襲ったが失敗した。

 

「確かにそうだけど・・・。」

「ジンジャー、俺は一族の平和を乱すものを許さん。殺してでもとめる。戦いに余計な感情をもちこむな。・・・死ぬぞ。」

 

バレットはそこまで言うとキャンプに向かって歩き去った。

 

(・・・・・・それでも俺は・・・!!)

 

 

 

 

同時刻、角猫一族の縄張りの反対側、バットの縄張り

 

「レギオン様、襲撃の準備、整いました。」

「御苦労。下がっていい。」

「は、しかしお気を付けください。連中はなにやら奇妙な奴を仲間にしていましたからね。」

「…あの翼猫か・・・。」

 

レギオンは興味なさげに答えた。

「ではご武運を。」

 

ケートスが部屋を出ていく。レギオンは人間が捨てて行ったのであろう、一人用のソファにゆったりと座りなおした。

 

(ふふ、何をしようが奴らに勝ち目はない。“この力”俺にがある限りな・・・。)

 

 

 

「ねぇ、バレット。あんたジンジャー見なかった?」

カモミールは姿が見えない弟のことを尋ねた。

 

「奴なら看護部屋だ。やけ飲みした分の青汁の補充をやらされてる。」

「青汁・・・ねぇ・・・。」

「あんた、あれ、どう思う。」

「・・・。ホウレンソウの苦汁を濃厚にしたような味・・・だな。」

「・・・要は不味いってことね。あの子はなんで平気なのかしら・・・?」

「・・・・・・さあな。」

 

 

その時だ。

 

「敵襲!!敵襲だ!!」

 

外の見張りの声が響き、イラクさを突き破って敵が押し寄せてくる。周りの堀のおかげでいっきに攻め入られることはないが、彼女たちはすぐに戦闘態勢に入った。

 

 

「ふんっ!はっ!」

「はぁっ!せい!てぁ!」

 

カモミールは迫ってきた二匹の懐に飛び込み、ラリアットでまとめて倒し、起きると同時に背後の敵を蹴る。続いて起き上がった二匹の顔面に裏拳を浴びせ、次にかかる。

 

 

バレットは流れるように敵を薙いで行く。

敵が彼を包囲したが。むしろこれは好機だった。

 

 

「はっ!せぇぇぇぇぇぇいぃぃ!!!」

 

バレットはすさまじい速さで斬撃を繰り出し、敵を倒した。これが彼の技、『ガトリングスライサー』である。

「・・・絶望の果てに行け・・・!」

 

「くっ!チッ!」

カモミールはケートスの放つ超音波の矢を転がって交わした。

 

「フフ、いつまでもかわしきれると思わないことですね。」

ケートスが不快感を煽る嫌な笑みを浮かべて、チャージに入る。

 

「ふんっ、せいぜいしっかり狙いなさいよ?」

カモミールは放たれた矢を跳躍してかわし、

パンチを浴びせようとした。

 

「うっ!?」

 

しかしその拳が決まることはなかった。突然、グニャリと景色が歪んだのだ。少なくとも彼女にはそう見えた。

「フフフフフ。」

 

「くっ、あんた、あたしになにを・・・?」

自分の目の前で今だ、立ち上がれない彼女を見下ろして、ケートスは言った。

 

「超音波の使い方が矢だけと思われては困りますねぇ。あなたの平行感覚を狂わせるなど動作もないのですよ。」

 

「そんなことが・・・くっ!」

 

カモミールは立ち上がろうとするがうまくいかない。

 

「はははっ!もはやまともに戦えないでしょう!?」

 

ケートスはカモミールを殴り飛ばし、止めの超音波矢を放とうとする。

 

「そこまでだ!!」

 

突如、灰色の塊が現れ、ケートスを蹴り飛ばした。グリフィンだ。

 

「あんた・・・。」

「俺はあんたにカッコつけなきゃなんねぇんだ。勝手に死なれちゃ困る。」

 

「ふふ・・・だれも死ぬ気はないわよ。」

 

カモミールはなんとか立ち上がると、ケートスを前足で指して言った。

 

「さぁて、往生なさい!!」

 

 

「あらかた片付いたか。」

 

別のエリアで戦っていたバレットは味方の援護に向かおうとした。

 

「・・・はっ!?」

 

バレットは敵の気配に気づいてそちらを向いたが、遅かった。

 

「ぐはっ!!」

 

猛スピードで接近してきた敵の爪が腹部を捉え、そのまま空中に連れ去った。

 

「ぐっ!くぅっ!」

 

バレットは必死に外そうとしながら、レギオンを睨みつける。対するレギオンはニヤッと笑うと、空中で半円を描き、地面に急降下する!

 

「!!くっ!うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

ズガァァァン!!!

 

「ガ・・・ハッ・・・。」

 

バレットは受け身も取れずに叩きつけられた。

 

「フンッ。」

 

レギオンが鉤爪を構えて急降下してくる。

 

「はぁぁぁぁ!!!」

 

「なにっ!?がぁぁぁ!」

 

今度はレギオンがたたき落とされた。

 

三色いや、四色の塊がバレットのすぐ前にち着地する。

 

体に青汁のこびりついたジンジャーだ。

 

「ジンジャー・・・。」

 

「バレット、君は俺に言ったよね。俺の考えは甘いって。」

 

ジンジャーが振り返ることなく話しかける。

 

「それが・・・どう、した・・・?」

 

「でも、これが俺なりに考えて出した答えなんだ。」

 

ジンジャーはファイティングポーズをとって敵に向かい合う。

 

「もうこんなことのために、皆が悲しむのは嫌なんだ!皆が笑ってい

られる未来のために、俺は戦う!!!」

 

その言葉は誓いか、宣言か。

 

彼は言い放った。その瞳に強い意志を宿して。