破壊の尾、狂気の爪牙

 

 

グリフィンがやってきてい週間がたとうとしていた。

部族のほとんどはまだ警戒の眼差しをしていたが以外と子猫達にはすぐ気に入られ、毎晩旅の思い出話や草笛を聞かせている。

 

つい昨日などは子猫を抱えて空のドライブに行くなどと言い出しブルースターにこっぴどく叱られていた。

 

ファイアハートはなんとなく彼と話していたが最初ほど疲れなくなった。

 

「僕もそろそろ夕暮れのパトロールがあるんだ。」

 

「そうか、俺はこの薬草をイエローファングに届けてくる。」

 

移動が速い彼は最近よく薬草取りに行かされている。さすがにイエローファングは口説かれても「年寄りをからかうんじゃないよ。」と笑っていたが。

 

 

 

「…どうもやな予感がするな。」

 

ブロークンテイルは不吉な予感を感じて目を覚ました。近くでファイアハートが新入りと話す声が聞こえる。

 

(まさかあいつらか…?フンッ。飼い猫め、せいぜい気をつけるがいい…)

 

サニングロックス付近の川沿いまで来た。

 

今日はグレーストライプとサンドストームが一緒だが、率いているのがタイガークローとロングテイルなので雑談をする気になれない。

何とも気まずいパトロールだ。さっさと終わらせたいと思いながら歩いていたその時だ。

 

「…!気をつけろ!」

 

戦闘にいたタイガークローが低い声で言った。

ファイアハートもはっとした。誰かの気配を感じる。こちらは風上なのでにおいは分からないがないかいる。全員で背中合わせにあたりを見回す。

 

「どこだ!隠れてないで出て来い!」

 

タイガークローが叫んだときだった。

 

「先輩!…上です!」

 

ロングテイルが悲鳴に近い声で警告した次の瞬間、何かが木の上から襲いかかってきた。

 

ファイアハート達は一斉に飛びのいて攻撃をかわす。ファイアハートは奇襲に動揺しつつも敵の姿を確認し、息をのんだ。

 

紫の目をした灰色に黒の縞を持つの雄猫。そしてその長い尾には鋭く輝く包丁の刃がくくりつけられていた。

 

「ははは、久しぶりだな、タイガークロー」

 

嘲笑うようなどこか狂気的な表情にファイアハートはぞっとした。

 

「貴様…クラッシュテイル・・・!」

 

「覚えててくれて光栄だな。そろそろ決着をつけようぜ。」

 

ファイアハートは知ってるかとグレーストライプに目で聞いたが彼は首を横に振った。

 

「ここで何しているここは俺たちの縄張りだ!」

 

「はっ!サンダー族か、イライラするぜ!」

 

そう言って突然雄猫はタイガークローに斬りかかった。タイガークローはすんででかわし、再び聞く。

 

「何が目的「キシャシャシャシャ、や~だな~兄貴~。俺も混ぜてくれヨ。腹減ってきたしサ。」

 

不意に背後から声がし、振り返ったそこには

こげ茶色の毛に青の目、長めの尾と、長く鋭い犬歯をした大きな雄猫がいた。タイガークローに負けないくらい大きく、さっきの猫同様、いやそれ以上に狂った笑みを浮かべている。

 

「クローファング…!」

 

「好きにしな、だがこいつは俺の獲物だ。」

 

クラッシュテイルがタイガークローを尻尾で指す。

 

「キシャ~…まあいいカ。他で十分足りる。」

 

それを合図に近くの茂みから次々と猫が飛び出してくる。

 

「数が多すぎる!みんな逃げ「おっと、逃がさないゼ。」

「か、囲まれた!」

「くそ、サンドストーム!隙を見て脱出しろ、全速力で応援を呼んで来い!」

 

タイガークローがロングテイルと共にクラッシュテイルに襲いかかる。

 

「キシャ~…どれがいいかな~♪ああ、その雌がいいかな~♪」

 

クローファングが離脱しようとしていたサンドストームに狙いを定める。

 

「彼女に手を出すな!」

 

ファイアハートが背中に飛びかかり咬みつく。その隙にサンドストームが敵の間をくぐって離脱する。

 

「あ~あ、行っちゃった。じゃ、お前でいいカ。」

 

クローファングが素早くファイアハートを振り落とす。体勢を立て直すが、敵の鋭い爪と牙が襲いかかる。ファイアハートはそれらを何とかかわし、顔を引っ掻いた。

 

「シャシャシャシャシャ!ニクわりには骨があるナ、お前。」

「何っ!」

「これだけ強い拳と爪ならきっといい狩りができるゼ。」

「いい…狩り…?」

 

何を言ってるんだこの猫は?その戸惑いが隙を呼んだ。

 

「シャァァァ!」

「はっ!しまっ…うわぁぁぁ!」

ファイアハートは敵のパンチを受けて川に落ちてしまった。

「ファイアハート!そんな嘘だ!」

 

グレーストライプが悲鳴を上げる。

 

「あ~あ、今日は調子悪いなぁ~。ま~た逃げられちゃった。」

 

クローファングは残念そうだが、少しも悪びれていない。

 

「お前、よくも!」

 

グレーストライプが飛びかかったが。背後だというのに振り返ることもせずにクローファングはグレーストライプを後ろ足蹴り飛ばした。

 

「ぐぅ…く…そ…。」

「ちょっと毛深いけどお前で我慢するカ。」

「ふざけるな…!」

 

グレーストライプは立ち上がろうと足に力を込めたが、まだ続く蹴りの痛みで思うようにいかない。

 

「今日の収穫一匹目♪」

 

クローファングが犬歯をむき出し、咬みつこうとする。だが、

 

「グハッ!」

次の瞬間クローファングは宙を舞った。何者かが横からドロップキックを放ったのだ。そしてそれはもちろん彼である。

 

「さすらいの翼猫…登場!!大丈夫か、グレーストライプ?」

「グリフィン…お前なんで…」

「サンドストームから聞いたのさ。他の奴も時期に来る。」

「シャララ?羽根が4枚」

「おっと、またせたなMr。こっからは俺が相手だ。」

「キシャシャシャシャ!楽しみ、また増えた。シャシャシャシャ!」

 

クローファングは高笑いをしながら茂みに飛び込んだ。

 

「おいっ!なんだ拍子抜けだな。」

それと同時にタイガークローと戦っていたクラッシュテイルや他の猫も逃げ出した。サンダー族の応援が駆けつけたのだ。

 

(何だったんだ…)

 

そう思った矢先だった。

 

「ねぇ!ファイアハートは!?ファイアハートはどこ!?」

 

サンドストームがグレーストライプを問い詰める。

 

「はっ!そうだ!ファイアハートが…ファイアハートが川に!」

「なんだって!?」

 

グリフィン達は慌てて川を除いたが彼の姿は見えない。

 

「流されたか…。川下まで見てくる!」

 

グリフィンは急いで飛び立つ。

(ファイアハート…どこだ?)

 

戦いが終わってから少したったころだった。

一匹の雄猫が重たい荷物を背負って、川沿いを歩いていた。

 

「この先の森を抜ければもうちょっとだな。

みんな元気にしてるかなぁ~。」

 

故郷に残してきた仲間達を思いながら、歩いていたそのときだった。

 

「あれ?何だろう…!大変だ!」

 

それはびしょ濡れのまま気絶したショウガ色の雄猫だった。