再訪
「絶対に君を守る。」
クロウフェザーが強く言った。
「ええ、あなたについて行くわ。」
リーフプールが答える。クロウフェザーはもう一度口を開いたが、言葉を発する前にそれを阻むものがいた。
「ほぉ・・・『守る』?立派なもんだぁ…。」
二匹が声のしたほうを向くと、そこには一匹の雄猫が枝に寝そべってこちらを見ていた。
「あ、あんたいつから!?」
「最初からいたよ。ボウズは嬢ちゃんに夢中で気付かなかったようだがな。」
その猫がこちらにふわりと舞い降りてくる。
(!!この容姿…もしかして・・・。)
「行く前に聞かせろ。ここを出てどうするつもりだ?」
「誰なんだあんたは!!なんであんたにそんなことを言わなくちゃいけない!!」
「…お前らがたどりつく結果の一つさ。」
雄猫は声を低くしていった。
「なにっ・・・?」
すると今度はやや威圧的な口調で雄猫が言った。
「さあ、答えろ!ここを出てどうするつもりなんだ。」
「こ、・・・ここを出て彼女と暮らすんだ!!」
クロウフェザーが歯ぎしりをしていった。すると雄猫の目つきが変わった。
ギロリと、睨みつけるように二匹を見据える。
「一緒に暮らすだと…?ならここはとおせねぇな…!」
雄猫が後ろ足で立ち上がる。
「…下がって。」
クロウフェザーがリーフプールを後ろに押しやり、鉤づめで切り付けた。
「なんだ?ふざけてるのか?」
全く効いていない。
「っ!」
クロウフェザーがもっと勢いをつけて切りつけたが相手は表情一つ変えない。
「それで本気か?」
歯ぎしりをするクロウフェザーを見下ろし、雄猫はあきれ果てたといった感じでため息をつく。
「はぁ・・・話にならんな!」
ゴッ・・・
「がはっ・・・。」
鈍い音がした後、腹を殴られたクロウフェザーが地面に突っ伏す。
「クロウフェザー!!」
リーフプールが弾かれたように彼に駆け寄る。
「なんで、・・・何でこんなことするんですか!!」
リーフプールの怒声に雄猫は悲しそうに言った。
「頭冷やして考えてみろ。お前らはすみかを移して旅をしたがそんなの世界のほんの一片にすぎねぇ。」
「世界にはお前らが知らない、お前らじゃどうしようもない脅威が数えきれないくらいある。」
雄猫は口調をきつくしていった。
「ボウズはともかく嬢ちゃんはろくに戦ったこともないだろ?体つきでわかる。」
「お前らは『部族』っていう盾を捨ててそんな危険に飛び込もうとしてるんだ。」
「戦士に毛が生えた程度の実力で、妻子を養っていけるのか?助けはないんだぞ。」
「・・・。」
「女を守るってのはそんなナマ易しいことじゃねぇ。」
そこから少し口調をゆるめていった。
「いいか、『禁じられた恋』ってのは、響きがきれいなだけで、ハッピーエンドを迎えられねぇのさ。」
「不滅のお約束だ。」
付け足しの部分だけなぜか決めポーズを入れる。
そのときだ。
「っ!!」
雄猫の表情が引き締まる。戦いなれた戦士の顔だ。
「ほら、お出ましだ。お前らの知らない『脅威』ってのが・・・!」
雄猫の後ろに、三匹の猫が現れた。皆、白骨の鎧を着けている。
「ボウズと嬢ちゃんは下がってな。」
雄猫は数歩近づき、前足で相手をさしながら言った。
「さぁて、・・・往生しな・・・!!」
セリフが言い終わるや否や、雄猫が駆け出す。
素早く無駄のない動きで、敵を殴り、蹴りつける。
突っ込んできた相手に向かって飛びかかり、足踏みキックを浴びせて蹴り飛ばし、着地するとほぼ同時に、背後の敵に裏拳を食らわせ、カウンターキックで頭を蹴り飛ばす。
「「・・・えっ!?」」
二匹は思わず声を上げた。蹴り飛ばされた二匹が灰に変わってしまったのだ。
「せいやぁ!!」
最後の一匹に向かって雄猫がジャンプし、サマーソルトスピンを交えたあと、
「でぇりゃぁぁぁ!!」
そのまま相手にドリルキックを浴びせた。
ザザッ!!
少し地面に線を残して、雄猫が着地する。
「ふぅ、終わったか。」
雄猫がこちらに歩いてくる。
「奴らはファントム。俺がまたこの部族を訪れたきっかけさ。」
「さっきの戦い方…決め台詞にその容姿・・・。あなたはやっぱり・・・!」
雄猫、背中に四枚の羽根をはやしたその猫は名乗った。
「御察しの通りだ俺は『さすらいの翼猫』グリフィンさ!」
『さすらいの翼猫』、再び四部族の前に姿を現した彼の目的とは…?