暗黒。言葉にすればたったの二文字だが、その本質はここのような場所を言うのだろう。
昼も夜もわからぬほどの暗さ。その中に彼らはいた。
「…クイーン。例のものは?」
「だめねぇ・・・。さすがスター族。もしもの時のセキュリティがかけられてるわ。」
ここは会議室。暗黒とした空間の中にある円形の間。床に張られた氷のスクリーンを眺めて、ビショップは奪取したアイテムの現状を聞く。
「はずすことは?」
「時間の問題ね。ま、この私にお任せあれ♪」
「ふむ・・・ナイト。奴らは?」
クイーンのどこか狂気じみた笑みにビショップは軽い寒気を覚えた。この女は美しい。が、ここまで醜いものはないだろう。
「仲間を集め、結界を張るらしい。が、セキュリティが外れればそんなもの一瞬で消し飛ぶ。」
ナイトは奴らが障害になるとは思っていないようだ…。
「ナイト…。連中をあまりなめないほうがいいと思いますが…。」
「フンッ、数じゃこっちが圧倒的に上だ…。先遣隊も派遣した。」
「それとルークの姿がないな…?奴はどうした?」
「さあ?どこへ行ったのやら…。」
「怖気づいたか?所詮奴など…。」
「俺がどうかしたか?」
入り口をくぐってルークが現れた。
「ルーク、何をやっていたのです?」
「なに、・・・『アレ』の様子を見ていただけだ。」
「『アレ』か・・・。」
「ああ。もうじき『アレ』は完成する…。フフフ・・・フハハハハ・・・。」
骸骨からのぞくルークの琥珀色の目はさぞ楽しげだった。
(やれやれ・・・。なんにせよ、仕事はきちんとしてもらいますよ。)
(ルークちゃんには悪いけど…。『アレ』は欠陥品ね…。)
(フンッ!悪趣味な男だ…。)
他の四天王たちの目はルークには映っていなかった。あるのはこの先にある、愉悦への期待だけ・・・。
「なんのようだファイアスター?大集会にはまだ一週間もあるぞ!!」
ここは集会の島。予想してたとおりブラックスターは不満爆発だった。他の二部族も不満を隠しているようだった。
ファイアスターが口を開こうとした時だった。
「ハッハッハァ!!聞けばお前もずいぶんエ・ラ・そ・うになったなぁ?え?ブラック『フット』。」
クラッシュテイルがファイアスターを押しのけた。
それからだ。島は少し、騒がしくなる。
「ギィィィヤァァァァァァァァァァァァァァァァァ!?!?!?!?!?」
ブラックスターが地面が触れるほどの絶叫とともに、飛び上がり…いや、半ば飛んでいたかもしれない。
「な、ななななな、なぜ貴様が生きているぅぅぅ!?あ、・・・悪霊!?悪霊か!!く、・・・来るな!!近づくんじゃない!!」
…別にこれはおおげさな表現ではない。事実、ブラックスターは驚愕しているのだ。無理もない。子猫の時分からのトラウマ、会いたくない猫№1が目の前にいるのだ。しかも・・・・・・死んだハズというオマケつき・・・。
「あいにく、俺の脚はこの通りだ。・・・静かにしろ。」
クラッシュテイルがブラックスターを黙らせる。
「え~ゴホン、本日お集まりいただいた理由は…。」
吉祥が軽い咳ばらいをし、説明を始める。
「説明は異常。了解をいただけるかな?」
どの族長も黙っている。ブラックスターはまったく信じていないようだが、クラッシュテイルが怖くて何も言えず、レパードスターは何かに利用できないか算段しているようだ。
ワンスターは黙っていた。ファイアスター達を信用してはいるようだが、いかんせん話が現実離れしすぎているのだろう。
「・・・ありえるのか?そんなことが。」
「でなきゃわざわざ日本から飛んできやしないよ。それにこのメンツ自体、現実味がないだろう?」
「…分かった。許可する。」
「リヴァー族もよ。」
二部族は賛成した。あとは・・・。
「・・・・・・・。」
「ほらっ、言え。」
「…チッ、許可する。正し!少しでも妙なことをすれば即刻蹴り出す。」
「フゥン、それでいい。」
「よし、それじゃ・・・-!!」
吉祥が気配に気づいた。
「来たか…。」
4つの部族は一斉に湖の岸に目をやった。
カシャン・・・・・・・。
白骨をまといし亡霊が、現れた。
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