プロローグ2
その猫はただ走っていた。もともとそんなに体力がない彼がこの長時間の間はしりっぱなしでいられたのは奇跡といえる。
胸が苦しい。息を吐くのがつらい。でも彼は走らないわけにはいかなかった。
なんのために?決まってる。死の恐怖から逃れるためだ。
全ては今朝から始まった。彼は食料の補充をと狩りに出たのだ。そこで今、自分を追いかけている奴ら・・・骨の鎧を着た猫たちを見かけたのだ。不審に思った彼はつい草陰から彼らを観察してしまったのだ。あのときこっそり逃げればよかったのだ。いまさらながら悔やまれる。
(はぁ、はぁ、はぁ、助けて!!誰か!!)
彼らは自分の存在に気付くといきなり襲いかかってきた。消去するとか何とかわけのわからないことを言っていた。
今まさに彼は追いつかれる寸前だった。
翼猫である彼の体は普通の猫より軽い構造になっている。しかし、羽が空気抵抗を起こすため走るのがうまくないのだ。
飛べば逃げることもできるが、相手が後ろにぴったり追いついているので飛び上がるタイミングが図れない。
(神様!いるんでしたら助けてください!)
ピシャァァァァァ!!!
その願いが通じたのか、突如、一本の稲妻が先頭の一匹を貫いた。
(雷!?違うそんなはずない!!)
本当の雷なら自分もただでは済まないはずだ。
そう思った次の瞬間、空を切って何かが奴らと自分の間に降り立った。
それは無駄のない動きで鎧の奴らに近づくと、素早くカウンターを決め、もう一体を蹴り飛ばした。するとどうだろう。攻撃を受けた二匹が灰になってしまったのだ。そして崩れ去るり、風にいくらかが吹き飛ばされていく。
「危なかったな。」
それが話した。そのとき彼、ペガサスは初めてその存在がなんなのかに気付いた。
四枚羽根の翼猫。年は自分よりだいぶ上で、左耳に目と同じ色をした勾玉でできたイヤリングを二つしている。
「かみ・・・さま?」
茫然と口に出た一言、それにその翼猫はこう答えた。
「神様?いや、どちらかというと、悪魔だな。」
「俺の名はグリフィン。お前は?」
「あっはい、僕はペガサスです。」
「ペガサスか。こいつはいい。幻獣の名前同士だな。」
「え、えっと・・・。」
戸惑うペガサスをしり目に、グリフィンは真剣な表情になって言った。
「悪いが一緒に来てくれ。いろいろと、面倒なことが起こった。」
「・・・?」
これが彼、ペガサスの戦い始まりである。