見習いになった日

 

 

 

「ルビーキット、何か聞こえる?」

 

私は小声でルビーキットに聞いた。

 

「今のところは聞こえないわ」

 

もう太陽が真上まできているのに、獲物は一匹だけなんて…

 

「これじゃあ、タイガーキット達にまけちゃうよ…」

 

ナイトキットが半泣きでいった。

 

「兄さんは?」

 

辺りをキョロキョロ見ている兄さんたずねる。すると、兄さんは耳をピクッと動かして鋭い声で叫んだ。「そこだ!」兄さんが尻尾でさす。一瞬兄さんの毛がかすった思ったらもう、獲物に飛びかかっていた。

 

「やった!捕まえたよ!」

 

「うわー.すごいよ!コーラルキット!!」ルビーキットが感嘆の声をあげた。「なぁ…」兄さんが遠慮がちに切り出す。「なに、スカイキット。」ルビーキットがにらむ。「どーせ、帰ろうとかいうんでしょ、いやよ!」

 

兄さんが困った顔をしてナイトキットに助けを求めた。「帰ろうよ、ね?」ナイトキットが優しくいいきかせる。「…わかった。」しぶしぶルビーキットがあるきだすと、みんなも後からあるきだした。

 

 

 

 

 

 

 

「「「あなたたち!!!今までどこに行ってたの!!!」」」母さんたちの怒った声がキャンプじゅうに響く。「「「「ごめんなさい…」」」今は母さんたちが怪物におもえる。

 

それに、ハイレッジの下にみんなが集っているから恥ずかしいし。

 

「今日はお前たちを見習いにしてやろうとおもったのにな」

 

父さんが少しおもしろそうにいう

 

「じゃあ僕達、もう見習いになれないの?」

 

心配そうな目でナイトキットがファイヤスターを見上げる。けれどファイヤスターはそれには答えなかった。かわりに四匹を優しい目で見回した。その時キャンプのトンネルをくぐる音がきこえた。タイガーキット達だ!

 

「「「ファイヤスター!!キャンプを抜け出してすみません‼」」」」ルビーキットが舌打ちをするのがきこえた。あーあ帰ってきちゃった!

 

「タイガーキット、ロウワンキット、ダークキット、スモークキットお前らも身なりを整えろ。」

 

慌てて毛づくろいをするタイガーキット達。ちょっとおもしろいかも。

 

ファイヤスターはハイレッジにとびのる。

 

「みんな、今日はたくさんの子猫が見習いになる。まず、コーラルキット。」

 

コーラルキットは誇らしい気分で族長にちかずく。

 

「コーラルキット、おまえは今からコーラルポーという名になる」

コーラルポーは首が外れそうになるくらい激しく頷いた。

「コーラルポーの指導者はおれがやる。ルビーキット、おまえは今からルビーポーという名になる。」

ルビーポーもやはり嬉しそうに頷いた。

「ダストペルト、おまえはスクワーレルフライトの指導が終わったな。ルビーポーの指導者になれ。ナイトキット、おまえは今からナイトポーという名になる」

 

ナイトポーが遠慮がちに頷く。

「クラウドテイル、お前が指導者になれ。スカイキット、お前は今からスカイポーという名になる」

兄さんが誇らしげに頷く。

「サンドストーム、君が指導者になれ。タイガーキット、お前は今からタイガーポーという名になる」

タイガーポーが堂々と頷く。あーもう!なんかムカつくなぁ。

 

「ブランブルクロー、お前が指導者になれ。ポピーキット、お前は今からポピーポーという名になる」

ポピーポーがゆっくりと頷く。

「ミスティフラワー、君が指導者になれ。ロウワンキット、お前は今からロウワンポーという名になる」

ロウワンポーが元気よく頷く。

「ソーンクロー、お前が指導者になれ。ダークキット、お前は今からダークポーという名になる」

ダークポーこっくりと頷く。

「レイブンペルト、お前が指導者になれ。スモークキット、お前は今からスモークポーという名になる」

スモークポーがおどおどしながら頷く。

「シルヴァークラウド、君が指導者になれ。」

父さんの言葉が終わると、みんなそれぞれの指導者と鼻を触れあわせる。

 

「コーラルポー!ルビーポー!ナイトポー!スカイポー!タイガーポー!ポピーポー!ロウワンポー!ダークポー!スモークポー!」

さすがに多いのでみんなが一回ずつ新しい名を呼ぶ。すると、むこうから年長の見習いのホワイトポーがかけよってきた。

 

「ほら!見習い部屋にいこう!コケをたーくさんとってこないと。寝床に敷くためにね。」

ホワイトポーが笑顔でいう。

「ありがとう。ホワイトポー。」私がお礼をいう。

「ねぇバーチポーはタイガーポー達ととりに行って来てくれる?」

ホワイトポーが近くでタイガーポー達と話していたバーチポーにたずねる。

「うん!わかった。」バーチポーはタイガーポー達とコケをとるために茂みに消えた。

「お腹減ってない?」ホワイトポーがみんなにたずねる。

 

「減った!!」ルビーポーが元気よく答える。わたしも減ったなぁ。「あっちの切株で食べましょうか。」ホワイトポーがむこうにある切株を指す。

 

「うん。」答えると同時に背中の毛が逆立った。振り向くとタイガーポーが冷ややかな目でこっちを見つめていた。