救世主
もうだめっ!!
そう思ったときだった。
「ストーップッ!!」
後ろで声がした。
明らかにポイズンテイルの声ではない。
「なんだ?」
ポイズンテイルも不思議そうに後ろを向いた。
そこには自分とそっくりの青いトラ猫。
違うのは、目利きぐらいだろうか。
「だれだ?」
「あ、覚えてないですか?」
この猫、どっかで見たことあったような・・・?
「名前を言え」
ポイズンテイルがうなった。
その猫はあきれたように首を張ったが、自分を見るなり目を輝かせた。
「僕はスカイウェーブです」
「え!?スカイウェーブ?」
「そうですよ。やっと思い出してくれましたか」
やっと思い出した。
この猫は自分が見習いになりたてのころに遊んだ猫だ。
だが、一週間かそこらでいなくなってしまい、そこから・・・・・・
「今までどこに?ほかの兄弟たちは元気かい?」
「だまれ」
ポイズンテイルが威嚇するようにうなった。
「お前を殺すのが先だ」
「ちょっと待ってください」
スカイウェーブが口を挟んだ。
「もうちょっと自分の気持ちに正直になりましょうよ。あなただって、サマースカイを殺したくないんでしょ?ほんとのところ」
「そんなことはない。何なら今殺してやろうか?」
「どうぞ。やってみればいいじゃないですか」
ポイズンテイルがこっちに向き直る。
鉤爪を振りかぶり、胸に突き刺そうとした。
が、ポイズンテイルは悲しそうに腕を下ろした。
「ほらね」
スカイウェーブが言う。
「あなたは、幸せな生活をしているサマースカイたちが恨めしかった。でも、兄弟たちと仲良くしたい。一緒に暮らしたいと思っていた。本当はこんなことしたくなかった・・・」
「でも、タイガースターに歯向かう事は出来なかった。こんなことをするぐらいなら、サンダー族にいたほうがよかった。ほ、本当は、父さんや母さん、一族のみんなが大好きだった・・・・でも・・・・・」
ポイズンテイルが泣きながら付け加える。
「いられなかった。シンダーペルトのお告げのせいで。あのお告げの意味を取り違えたせいで。あれは・・・あれは・・・まったく違う意味のお告げだった・・・」
スカイウェーブが返す。
「俺たちみんな、お前たちや一族を愛していた」
「さて、そろそろ終わらせましょう」
スカイウェーブはそういうと、ポイズンテイルに向き直った。
「覚悟はできてるさ。俺たちは今までいろんな猫の命を奪ってきた。死ぬのは当然さ」
「え?」
「サマースカイ、ポイズンテイルは殺す」
「え?だめだよ・・・・兄さんなんだから・・・・」
「じゃ、シンダーペルトやブラックナイトは?こいつを一族に入れたら、みんな逆襲をたくらむぞ」
「そうかもしれない・・・けど・・・・殺すなんて・・・・」
「じゃ、最後のときだけつき合わせてあげるよ。でも、これはスター族からの命令なんだ・・・」
スカイウェーブの目には、計り知れない苦痛と悲しみが浮かんでいた。
「ごめんなさい!!」
その声と同時にポイズンテイルの体に鉤爪が振り下ろされた。
耳をふさぎたくなるような悲鳴があたりを劈く。
「またいつか会いましょう、サマースカイ・・・・・」
スカイウェーブは涙を流しながら言った。
「え、待ってよ・・・・」
「スター族が呼んでいるんです。さようなら」
その言葉を残して、スカイウェーブは消えた。
頭が混乱したサマースカイは、紫色の毛を血に染めた兄のもとへ向かった。
「サマースカイ・・・・こんな・・・・みっともない・・・・・兄貴でごめんな・・・・」
「兄さん、お願いだから死なないで!」
「ほかの兄弟たちにも・・・・・一族にも・・・・謝っておいてくれ・・・・・」
「喋らないで・・・・お願いだから!!」
「父さんや母さんにも・・・・・よろしくな・・・・・」
「ポイズンテイル・・・・・」
「兄さん!!!」
サマースカイには分かった。
もう、ポイズンテイルは死んでしまうことが。
「サマースカイ・・・・・俺は・・・・死んだら・・・・どこ行くか分からないけど・・・・ずっと・・・お前たちを・・・・見守っているからな・・・・・」
「さようなら・・・・サマースカイ・・・・」
その瞬間、
ポイズンテイルは目を閉じた。
兄さんは死んだ。
愛する兄弟を残して。
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ああww
ポイズンテイルがww
死んでしまいましたww
提供してくださったはちみつさん、本当にありがとうございました。