偽りのリーダー
「ブルースターは本当に族長ですか?」
スプリングフラワーの言葉に族長が肩の毛を逆立てた。
「なんてことを言うの!」
「す、すみません・・・でも―」
ウィンタースノウが言い訳を考えていると副長の言葉にさえぎられた。
「サンダー族のみんな!敵だ!シャドウ族だ!」
ウィンタースノウはびっくりして族長の部屋を出た。むかつくシャドウ族のにおいが鼻を突く。
隣ではサマースカイがく青い目を見開いている。
ウィンタースノウは近くにいたトラ猫の不意をついてわき腹を引っかいた。
次の瞬間、ウィンタースノウは凍りついた。
まさかこいつと再会するとは。
あのこげ茶色のトラ柄で、恐ろしい琥珀色の目をしたやつはあいつしかいない・・・
「ブランブルポー!!」
「俺はもう見習いいじゃない!言葉に気をつけろ、ウィンターポー!!」
サンダー族の元見習いは、見下したように言った。
「こっちだってもう見習いじゃないわ!」
ウィンタースノウは敵のキックをかわしながら激しく言い返した。
「ふん、お前の部族はもうじき滅びる」
「何ですって!」
「落雷でシンダーペルトが死んだんだろう?」
ウィンタースノウは怒りで毛を逆立て、顔面にパンチを食らわした。
「あんたには関係ない!」
「いや、ある」
相手は隙を見ながら引っかいてくる。
「だいたい、今度の襲撃の理由は何よ!」
「前も言っただろう?シャドウ族は獲物が不足している、と」
「そんなこと聞いた覚えはないわ!!」
ウィンタースノウは切り返すと尻尾に噛み付いた。
「覚えていろよ。お前はもうすぐ影によって滅ぼされるんだ」
「そんなの知ったこっちゃないわ!」
裏切り者の戦士は、捨て台詞を残して去っていった。
「逃げしなに 覚えていろは 負けたやつ」
その声に振り向くと、スノウファーが逃げていく戦士に言った。
「ウィンタースノウ!来てくれ!」
族長の部屋からフォールリーフの声がする。
部屋の中ではサマースカイとブルースターが取っ組みあっていた。
「どういうこと?」
ウィンタースノウはその光景を見ながらどっちに味方するか迷った。
ふと、すぐ隣にスポッティドリーフの甘い香りがした。
(ウィンタースノウ、族長を助けてあげて)
(闇の力から開放してあげて)
(あなたならできるわ・・・)
そういって甘い香りは消えた。
「どうやって助けるの?」
そうつぶやいた瞬間、ブルースターを操る邪悪な影が見えた。
「族長を放して!!」
ウィンタースノウはサマースカイをどけると
黒い影に飛びかった。
「何をするんだ?」
後ろで弟がそうつぶやいたのが聞こえた。
ウィンタースノウはがむしゃらに影を引っかいた。
しばらくすると漆黒の影がブルースターの体から離れた。
『これで終わったと思うなよ・・・』
その声が消えると、ブルースターがぐったりと倒れ掛かってきた。
「敵が消えたわ!」
部屋の外からアイヴィーリーフの驚いた声が上がった。
ブルースターを兄に任せて部屋を出ると、さっきまでいた敵が一匹残らず消えていた。
「いったいどうなっているの?」
「これは幻影だったというの?」
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「幻影作戦、大成功!」
「よくやったぞ。ごくろうさん」
「だから言いましたでしょう?タイガースター様?」
「ああ、そうだな。でも、そろそろ弟も呼んだらどうだ?」
「まあ、そうあせらないでくださいよ。もうすぐ来ますから」
「なるべく早くしろよな」
「かしこまりました、族長様」
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九話終了!
悪役の名前がまだ決まらない一方です。
弟も含めてドシドシコメください!
待ってマ~ス