兄弟との戦い

 

 

ウィンタースノウは粉雪が舞い散る平野にいた。

 

ここはどこかしら?

 

素朴な疑問に答えてくれるものはいない。

 

「だれかいるの?サマースカイ?フォールリーフ?スプリングフラワー?」

 

ウィンタースノウの声が雪原にむなしく響く。

 

 

 

「やあ、かわいい子猫姫」

 

その声に振り向くといたのは・・・・

 

「・・・・・マッディストリーム・・・・・」

 

「なんで?・・・どうして?・・・」

 

「お前を殺しにきた、といえばいいかな」

 

そう返すと、憎しみのこもった緑の目をこちらに向けた。

 

気づいたときにはもう遅かった。

 

敵が雪を撒き散らして、ウィンタースノウの足を払った。

 

ウィンタースノウは見事にひっくり返り、敵の下敷きになった。

 

「ちょっとタンマ・・・・・」

 

「お前なんか殺してやる!!」

 

ウィンタースノウの声を無視してマッディストリームが唸った。

 

「お前の体を八つ裂きにしてタイガースターにその毛皮を見せてやるっ!!」

 

ウィンタースノウは相手の声を気にしないように勤めながら抜け出そうと身をよじった。

 

二匹は雪原の中を悲鳴を上げて転げまわった。

 

やっとの思いで相手からもがいて抜け出すと、反撃をしようと相手に飛び掛った。

 

だが、ふと脳裏にある思いが浮かんだ。

 

いま、この場にはふさわしくない感情が。

 

この猫は、私たちの兄。

 

自分が傷つけていい存在ではない。

 

いくら残虐な猫だとしても、私にこの猫を殺すことは出来ない。

 

私は今、完全に躊躇している・・・・・

 

「ねぇ?私たち一応兄弟でしょ?」

 

「だからなんだ?」

 

「戦わなくてもいいんじゃない?」

 

「そんな理由で俺が降参すると思うか?」

 

「残念だったな」

 

その声と同時に地面が激しく揺れた。

 

ミシミシミシッ!!

 

その音に気づいて振り返るときはもう遅し・・・・

 

ウィンタースノウの頭上に木が倒れてきた。

 

「きゃあっ!」

 

幸い自分は生きていた。が、マッディストリームはそれを楽しむように見ている。

 

「残念だなぁ」

 

「君みたいなかわいい子猫ちゃんが死ぬなんて、ねぇ」

 

「実に惜しい」