超越新種
ジジジ・・・・・・バチッバチッバチッ!
稲妻を纏った腕がジンジャーに向けられる。
「・・・!」
照準が定まると同時に光が増し、
「-!」
ズドォォォォォォォォォォ!!!!!!!
雷のエネルギーが一気に解放された!!
「ハァ・・・ヒィ、ヒィ!」
ケートスは必死に逃げていた。時折ぬかるんだ地面に足を取られ転び、泥まみれになっても一心不乱に逃げていた。
(バカな!ありえない!グリフィン…あの猫は危険すぎる!)
(族長に…レギオン様に伝えなければ!奴を野放しにしたら…我ら…いや、この山は滅びる!)
凄まじい光流がジンジャーを飲み込もうとする。
(・・・死ぬ?)
閉じた瞼の裏に一瞬誰かが移った気がした。懐かしいあの影、あれは・・・。
ドワァァァァァァァァァァ!!!
(・・・え?)
いつまでたっても体を焼かれる感じが来ない。
ジンジャーは目を開くと、またあり得ない光景を目にした。
「雷が・・・俺を避けている・・・?」
あり得ないことだがそうとしか説明がつかなかった。
グリフィンが放ったエネルギーは石に当たった川の水の様に二つに割れ、ジンジャーの後ろの地面を抉っている。
「・・・!」
それを見た瞬間、グリフィンが翼を広げて、逃亡した。
「グリフィン!!」
「だめだ!追うな!ジンジャー!!」
駆けだそうとしたジンジャーを止める者がいた。
「と、父さん・・・。」
「行けばお前は殺される。」
夜になった。怪我をした仲間の手当てはあらかた終わり、カモミールの埋葬も終わった。一族は今後の対策のため、集会を開いていた。
姉の死はたまらなくつらい。が、ありえない出来事の連続でジンジャーは混乱していた。
「父さん。彼は・・・グリフィンは一体どうしてしまったの・・・?」
答えが返ってくるとは思わなかった。
しかし、
「彼は、・・・覚醒したんだ。エクシードとして。」
「えっ・・・?」
エク・・・シー・・・ド・・・?
「まさか・・・彼が、伝説の・・・?」
「そう、おそらく彼は、伝説のエクシードと、同じ出生だ・・・。」
「どういうことなんですか!?族長!!」
バレットが割り込んできた。そして父は少し考えると言った。
「・・・まず部族のみんなに伝えなければならないな。エクシードとは、・・・なんなのかを。」
「グリフィンにバレット、お前たちが生まれる少し前のことだ。覚えているものも多いだろう?この山に一匹の翼猫が現れた。」
「翼猫が・・・?」
「ああ、彼は伝説が好きでな。各地を飛び回って、伝承や伝説を聞いて回る旅をしていた。」
「俺は彼と知り合い、エクシードの話をした。」
「するとどうだ。あいつは驚いて言ったよ。それは『超越新種』のこ
とじゃないか・・・とな。」
「超越・・・新種・・・?」
「ああ。時代も名前もわからない。だが世界にぽつぽつと伝わっていたそうだ。あらゆる存在を『超越』する、究極の力をもった生物がいた・・・と。」
「究極の生命体・・・。」
「そして彼はこれまで自分が見聞きしてきた情報から、一つの仮説を考えた。」
「この世には猫であって猫でないものが最低でも4種類存在する。」
「俺たちの角猫のように突然変異から誕生したもの。長い歳を得て変化したものなどだ。」
「そして、それらの間に、とても低い可能性で生まれるのが、エクシード。だからエクシードに普通の猫の姿をしたものはいない・・・。」
「彼の姿を見たとき、まさかと思った。四枚羽の翼猫は普通いないからな。」
「じゃあ、なぜグリフィンは・・・あんなことを・・・?」
昼間のグリフィンを思い出してジンジャーが問う。
「・・・おそらく彼は暴走している。」
「っ!!暴走!?」
「ああ。力に飲み込まれたんだろう。」
飲み込まれた・・・?じゃあ彼は・・・!?
「・・・族長。命令を。奴を止めるにせよ、・・・最悪、殺すにせよ、対策が必要です。」
バレットが言った。だが帰ってきた答えは・・・
「無理だ。エクシードに対抗できるのはエクシードしかいない。」
「なっ!?ならばこのまま滅ぼされろと!?」
バレットが驚きと失望の混じった声を上げた。
「まて。そうはいっていない。一つだけ、希望がある。」
そう言って今度はジンジャーに視線を移した。
「ジンジャー。お前だ。」
「えっ・・・?」
「昼間の戦闘ではっきり分かった。お前が彼を止めるんだ。」
(止める!?俺が、彼を!?)
「で、でもどうやって!?父さん、さっき自分で言ってたじゃないか!!エクシードに対抗できるのはエクシードだけだって!!」
すると、父の口からは思いもよらぬ言葉が出た。
「そうだ。ジンジャー。お前も・・・エクシードだ。」