救世の破壊神

ジンジャーが力を手にしたのと同じころ。

 

「なあ、バレットお前はむなしいと思ったことはないか?こんな戦い。」

 

「突然何を・・・お茶を濁すのはやめてください!」

 

夜もいい加減深くなってきたので、ほとんどの者は部屋に戻ったが、バレットは今だ、リーフを問い詰めていた。

 

「曽祖父から続くこの戦いだ。きっかけが何でどっちに非があるか、もう誰もほんとのことはわからない。」

「そして、バットも教えられてきたほど悪いやつらではないさ。」

 

「それは族長がまだジンジャーの母親の幻影に振り回されているからじゃないんですか・・・!」

 

「・・・仮にそうだとしても俺は奴らとの共存を信じたかった。」

「だが、俺に二つの部族を結びつけるだけの力はなかった。」

 

「・・・それで、息子に、エクシードの可能性に賭けようとした・・・ですか。」

 

「ああ。だが、俺はダメな男でね。ジンジャーがお前や、カモミール達と楽しくやっているのを見て、俺はジンジャーに角猫として生きてほしくなった。・・・いま思えば看護猫志望を受け入れたのもそのせいかもな。」

 

「なら、なぜエクシードのことを話したんです…?」

 

「昼のグリフィンはまだフォーミングアップ程度にしか力を出していない。」

 

「な、・・・!?」

 

「その気になればあの場にいた全員を殺せただろう。」

「エクシードの力は常識を逸脱している。ジンジャーだけに教えたとしても、隠し通せはしない。」

 

「・・・ならどうするのです。これから・・・。」

 

「…可能性に…懸けるしかない。」

 

そして一つため息をついて言った。

 

「・・・ホントに俺はどうしようもないな。」

 

リーフは落胆しながら言った。だがその時、

 

「そんなことありません!!」

 

族長部屋にジンジャーが入ってきた。

 

「ジンジャー!?お前まさか聞いてたのか!?」

 

「ええ、少し。」

 

ジンジャーはバレットに言うと父に向かい合う。バレットは何も言わずに席を外した。ジンジャーは心の中で気を使ってくれたバレットに感謝しつつ父に言った。

 

「父さん。俺気付いたんです。生まれなんて関係ないって。」

「父さんが母さんと出会わなければ俺はここにいないんです。」

「そして父さんは俺を息子として、角猫として育ててくれました。」

 

「だが俺は自分の夢のためにお前を無理やり戦いに狩りだそうとした。」

 

暗い表情でリーフは言う。

 

「すまない。お前には、看護猫としてだけ生きて欲しかった。」

 

リーフが地面に着くほど頭を下げる。だがジンジャーは優しく微笑みながら言った。

 

「父さん。頭を上げて。父さんは一つ勘違いをしてるよ。」

 

「勘違い・・・?」

 

「はい。俺が戦うのは父さんの夢のためじゃなく自分の夢のためです。」

「だから父さんは悪くないし、それに俺は思うんです。これで良かったって。」

「だって。バレットや、グリフィンに姉さん。そして、父さんに会えたから。」

 

「!ジンジャー・・・。」

 

「ありがとう。父さん。俺を息子として、角猫、ジンジャーとして育ててくれて。ありがとう。」

 

「すまない、ジンジャー・・・すまない…!」

 

感情を抑えきれずに泣き始めた父をジンジャーは優しく、なだめていた。

 

 

 

 

「待ってください、レギオン様!!本気なのですか!?」

 

「ああ、部隊を組め、ケートス。」

 

「しっしかし、あの翼猫が現れる可能性も・・・。」

 

「奴が俺達だけに襲いかかる可能性は低い。いざというときは俺が奴を倒す。」

 

「・・・レギオン様の力ならばあいつにも匹敵、いや凌駕するでしょう。」

 

「世辞はいい。襲撃は五日後だ。兵の士気を上げておけ。」

 

「はっ!」

 

 

 

五日が経った。一族はあの後集会を再度開き、ジンジャーとバレットの必死のフォローもあってリーフの統率力はなんとか保たれた。

 

「ありがとうバレット。まさか君が手伝ってくれるとはね。」

 

「あたりまえだ。副長がいない今の状況で統率力を失ったら部族はなくなるからな。」

 

そうやっていちいち理由を用意するところが彼らしい。ジンジャーは久しぶりにおかしくて笑った。

 

「・・・なにがおかしい。」

 

「いや、君らしいと思ってね。」

 

「フンッ。」

 

久しぶりの和やかな雰囲気だったが、次の言葉でそれは破られた。

 

「敵襲!敵襲だぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「!きたか!!」

 

「行こう!」

 

二匹は走り出そうとしたが、突然足をとめた。コウモリ猫一族とは別の存在が迫ってくる。

この感じは、間違えようがない。彼だ!!

 

「・・・・・・。」

 

全く逆の方向から、堀を飛び越えてグリフィンが姿を現した。以前に増して、オーラが強くなっている。

 

「…。彼は任せてくれ。俺がやる。」

 

「・・・気をつけろ。今の奴は破壊の使徒だ。」

 

厳しい視線でバレットは話す。

 

「だがそれ以前に奴は俺達の仲間だ。」

 

「!バレット・・・。」

 

「グリフィンを・・・頼んだぞ。」

 

ジンジャーはしっかりと頷く。

 

「ええ。そっちも絶対に死なないでください。」

 

「俺は死なん。俺を殺せるのは天と、俺自身だ。」

 

二匹は拳をコンッ!と一回ぶつけると、そのままそれぞれの相対すべきものに向かっていく。

 

「・・・・・・!!」

 

「グリフィン、必ず助ける!」

 

ジンジャーはグリフィンと対峙すると、立ち上がり、力を呼び起こす。

 

夢で見たもう一人の自分がイメージで現れ、ジンジャーと重なると共に、姿を現す!!!

 

「コォォォォォォ・・・せいやぁ!!!!」

 

赤い角、若干筋肉質になった体。グリフィンとまったく同じ性質の黒いオーラ。輝く金の瞳。

 

ただし夢で見た戦士とは明らかに違う点が一つあった。

その瞳は闇を見つめてはいない。むしろ闇を照らしだすように強い信念と、優しさの光にあふれていた。

 

これこそ、真のエクシード。ゆるぎない強さと慈愛を宿した救世の破壊神。

 

 

「超越新種、エクシードジンジャー」降臨!