第三の悪魔
ザシュ!!
バレットは敵を鉤爪で切り倒し、次に向かう。
ぬかるむ地面は時には戦闘の障害に、または反撃のチャンスに姿を変える。
(どこだ・・・?どこにいる?)
彼は苦戦する味方をサポートし、見習いに士気を送りながら敵将―レギオンかケートスを探していた。
ドドォォン!!!
「む?ぬぉ!!?」
キャンプの向こうで、突如、凄まじい雷鳴と爆発音が響き、その余波で起きた爆風に何匹かが吹き飛ばされた。
バレットは四肢を踏ん張ってそれに耐える。
(なんて力だ、・・・。ジンジャー、頼んだぞ・・・!)
両部族の大半がまだ何が起きたのか分からず、ぼぉっとしている。だからこそ彼は見つけることができた。
「そこか!ケートス!!」
バレットは飛びかかったが、気付いた敵はすぐさま重音波バリアで彼を跳ね飛ばした。
「貴様だけは…絶対に許さん・・・!」
着地し、相手を睨みつけながら、そう低く告げる。
「フンッ!ならどうします?かたき討ちでもしますか?」
「…。復讐心のままに戦えばどうなるかは知っているはずだ。お互いな。」
暴走したグリフィンの姿を思い出しつつ、言う。
「だが俺はジンジャーほど優しくない。貴様を殺す・・・!」
この敵の手にかかって死んだ戦士は少なくない。そして一族を殲滅せんとするこいつを許すわけにはいかない。
「ククク・・・面白い!やってごらんなさい!」
バレットは果敢に攻めるが敵はそれをことごとくバリアではじき、崩れた体勢を狙い撃ちにしてくる。
「無駄ですよ。あなたの技でこの壁は破れませんよ!」
バレットを殴り飛ばしながら、ケートスが嘲笑う。
「チィ・・・!」
敵の言ったことは事実である。一発の重さより手数を重視したバレットの技でバリアの突破は難しい。
「死ねぃ!!」
超音波矢が放たれる。
(今だ!)
バレットはジャンプでかわした。そのまま敵の頭上まで飛び上がる。
「む!?」
ケートスが超音波を浴びせてバランスを崩そうとしたが、
「ふんっ!」
彼は空中前転で、ギリギリかわし、敵のすぐ後ろに着地し、格闘戦に入る。
「この距離で壁は張れまい!」
連続手刀を繰り出し、ふっ飛ばす。
「くっ・・・!やれ!奴を殺せ!!」
ケートスの命令に従って周りの部下があ埋まってくる。
しかし、
「一対複数は、・・・お手の物だ!」
バレットは必殺のガトリングスライサーで敵をたたき切り、ケートスに突進する。
超音波矢が飛んできたが構いやしない。彼は地面を蹴って角を突き出す。
「絶望の・・・果てに行けぇぇぇぇぇ!!
!!」
「がはぁぁぁぁ!!!???」
蒼い弾丸とかした彼は、角でケートスを突き刺し、木に叩き付けた。
片方の角が反動で折れたが、敵の副長を打ち取った。
「任務、完了。」
突如、叫び声が上がった。それまで何があっても沈黙を守り続けていた魔神が、叫んでいる。低く、天を貫くほどの声を轟かした後、魔神は一匹の猫に変わった。
「ジンジャー・・・。」
「グリフィン!・・・良かった。」
二匹がお互いに歩み寄ろうとした時だった。
ドォォン!
急に爆発が起き、二匹は吹っ飛ばされた。
「ふん、・・・元に戻ったか・・・。」
第さんの悪魔が翼を広げて降り立つ。
「レギオン・・・!」
「その姿は!!」
そう、今のレギオンは普段と違っていた。若干筋肉質になった体。ダークブルーのオーラを発し、瞳は青に、翼は銀に代わっていた。
「そうさ、俺もエクシードだ。」
「くっ!」
ジンジャーが身構える。
「おっと、やめておけ。そんな消耗した体じゃ俺には勝てないぞ。」
悔しいが事実だ。ジンジャーもグリフィンも完全に消耗している。
だが、次にレギオンが発したのは驚くべき内容だった。
「おい、お前。部族の命運をかけて俺と一つ賭けをしないか?」
「え・・・・?」
「両部族共通の掟、決闘の掟を知ってるな?」
「・・・!」
決闘―それは両部族の代表同士が山の指定ポイントで一対一での戦い、勝てば相手部族を思うにできるが、負ければ文句ひとつ言わずに従わなければならない。そのリスクの大きさから長年決闘が行われることはなかった。
「悪い話ではないと思うぞ、犠牲は最小限。勝てば相手部族を好きなようにできる。」
「なぜ、・・・突然?」
「このさいはっきりさせようと思ってな。最強は誰なのかを。」
「そんなことのために!」
「受ける受けないはお前らの勝手だが、賢明な判断をするんだな。」
レギオンの命令に従って敵が撤退していく。
(レギオン・・・いや、兄さん・・・。)
「ジンジャー、・・・。」
グリフィンがボロボロの体を引きずって寄ってきた。
「グリフィン、俺は―。」
決戦の時は近い。