誓いを胸に
「さぁて、往生なさい!」
カモミールがケートスに向かって言い放つ。
「ふんっ!いいでしょう。二人仲良くあの世に送ってあげますよ!」
ケートスが背中に生えた小さめの翼を広げて威嚇する。
「っしゃあ!いくぜ!!」
グリフィンが駆け出し、格闘し始める。
「はっ!てりゃ!」
「せいや!ふんっ!」
相手はグリフィン攻撃を受け流し、蹴りを入れて距離をとる。
「あなたも立てなくしてあげますよ!!」
「!気をつけなさい!!」
「-!なんの!!」
グリフィンは跳躍してかわし、ムーンサルトスピンを入れたフルキックを浴びせる。
「ぐぬぉっ!?」
「-よし!もう一発だ!」
グリフィンは今度はドロップキックを放つ。
しかしその時だ。倒れたケートスがかすかに笑った。
「-!待ちなさい!!技を出さないで!!」
カモミールが気付いた時にはもう遅かった。
「うお!?」
突然耳鳴りのようなものが聞こえたと思うと、次の瞬間壁のようなものにグリフィンは弾かれていた。
「なっ・・・。」
「ククク・・・重音波バリア。この羽根の振動と私の超音波でできる強力な音波の壁はあなたくらいの体重なら跳ね返せるのですよ。」
「く、そんなカードを隠し持ってたとはな。」
「なんとでも。戦いにトリックはつきものでしょう?」
「…もしあんたの言ってたことがほんとなら、背後にバリアはないわよね・・・?」
不意に背後から声がした。
「っ!?いつの間に!!」
「へ、かかったな。」
「戦場では周囲を常に確認する。教わらなかったかしら?」
背後に回り込んだカモミールが技の構えをとる。
「ふぅぅぅぅぅ・・・・はぁぁ!!」
居合いの様に腰をひねり、そこから必殺技、「ブレイクアッパー」を繰り出す。
「がぁぁぁぁ!!」
ケートスが吹っ飛ばされる。さらにグリフィンがこれに合わせる。
「こいつはおまけだ!もってけ!!」
グリフィンがオーバーヘッドキックを放って止めを刺した。
「ぐぅ・・・ここまでの様ですね。」
ケートスは部下たちに道を阻ませて撤退していった。
「はっ!コォォォォ・・・ふんっ!!」
ジンジャーは構えをとり、気合を入れる。
「…フンッ、来な。」
対するレギオンは鉤爪をだらんと構える。一見、やる気がなさそうに見えるが、これは余裕の表れだ。
「ジンジャー、気を付けろ。」
「はい。俺は大丈夫です。バレットは下がってください。」
「・・・了解。」
バレットが下がったのを確認した後、ジンジャーは一気に肉薄する。
「はっ!せい!しゃ!!」
「ぬぅえい!でぇい!」
ジンジャーが拳を突き出し、レギオンが受け止める。レギオンが切りつけようとすれば背をそらしてかわし、左手でチョップを出す。しかし、これもかわされ、敵の蹴りをガードして距離をとる。
「ハッ!」
レギオンが飛翔し、鉤爪を構えて猛スピードで迫る。バレットを倒したあの技だ。
「ぬぅえぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「-!おおおおお!!!」
腹にめり込んだ鉤爪をつかんで、足を踏ん張り、受け止める。
「ぬぅぅぅぅぅぅん!!!」
「おおおおおおおお!!!」
地面にい本の線を残した後、勢いが落ちたそれをジンジャーは投げ飛ばした。
「ぬおぁ!?」
レギオンが腹をむき出しにして倒れる。
「-!はぁ!」
ジンジャーは止めを刺そうと拳を振り下ろすが、
「ぐぅ!?」
レギオンが爪をつきたて、先ほどの傷をさらに深くした。ジンジャーはたまらず後ずさる。
「どうした?その程度かよ?」
「・・・くっ!」
(ならば、今こそ、この技を使う時だ!!)
ジンジャーは息を少し整え、技の体制に入る。
胸の前で拳を合わせ、腰を落としながらそれをゆっくり開いていく。
「ブレイク!!ダイナマイト!!!」
技名とともに、すくみの気迫を放ち、相手の動きを封じる。
「・・・・!?」
敵が技に気付いたがもう遅い。ジンジャーは全速力で突っ込み、止めのパワーラリアットをたたきこむ。
「ぐごぉ!!??」
「ハァァァァ!!」
首をしっかりとらえ、そのまま地面に相手をたたきつける。
「がはっ!!」
「ハァ、ハァ、ハァ・・・。」
疲れがどっと襲ってくる。当然、この技は捨て身技なのだ。しかしその威力は現状が物語っている。
「ぐっ、おのれ・・・!」
レギオンが足をふらつかせ、よろけながらジンジャーをにらむ。
(あの“力”を使うか?・・・いや切り札は最後まで取っておくべきか・・・)
何も焦ることはない。そう思い直したレギオンは撤退命令を出した。
「師匠。どうですか、バレットの容態は?」
ジンジャーは看護部屋で師、アッサムにバレットのことを尋ねる。
「はっきり言って奇跡だね。あの高度と勢いで落ちて骨が一本も折れてない。打ち身はひどいがなんとかなるだろう。」
「そうか・・・よかった・・・。」
ジンジャーはほっと胸をなでおろす。
「お前さんも今日はゆっくり休め。」
「はい。ではお先に失礼します。」
部屋に戻る途中、草笛が聞こえてきた。聞きなれた姉の演奏と、へたくそなグリフィンの演奏だ。
ふとそちらに目をやると、グリフィンが尻尾を姉の尻尾にからませようとして、ピシャリ!と尻尾でたたかれた。
ふふふ、とジンジャーはその光景を見つめながら部屋に戻って行った。こんな微笑ましい光景を守りたい。そう胸に誓って。