対決、エクシード対エクシード後編
ジンジャーが構えをとりなおし、再び接近する。
「はっ!やっ!せい!!」
パンチをしかけるが、おかしい。明らかに接近戦なのに防御だけで反撃しない。
「・・・!!」
そう思った矢先にグリフィンが動きに出た。ジンジャーのパンチを沈んでかわし、腹にヘビーパンチを叩きこんできた。
「がはっ!!」
さらに回し蹴りを繰り出し、ガードを崩して、そこからドロップキックを入れた。
「うわぁ!」
ジンジャーは倒れ、泥を跳ね上げた。
(負けられない!負けるものか!!)
ジンジャーは立ち上がると、精神を集中し始める。
「・・・!?」
「ぉぉぉぉぉぉ・・・はぁぁ!!」
オーラが渦を巻いて体を包み込み、それを両手で引き裂くと、ジンジャーは新たな姿に変化した。
三毛毛の白を除く部分が赤くなり、そして右腕、さらには胴体の左肩から右腰にかけても赤くなった。
オーラは出なくなったが、以前威圧感はある。
「オオオオオオオ!ふぅん!!!」
ジンジャーは雄たけびとともに構えをとり、敵に突撃する。
グリフィンも正面から迎え撃ち、再び氷の鉤爪で切りつけようとする。だが、
シャ!!
「・・・!?」
鉤爪は空を切った。グリフィンが切ったのはジンジャーの残像だったのだ。
ドカッ!
すかさず背後に目を向けるがすでにいない。
右から、左から次々に攻撃を受ける。
今のジンジャーは念力とオーラを身体能力の強化だけに使っていた。超常現象能力も限定されてしまうため、防御はほぼ回避に頼っているが、その分パワーアップした格闘はエクシードさえも凌駕する。
「はぁ!」
「・・・!!」
しかしグリフィンもやられてばかりではいない。翼を広げて飛翔し、正面からの攻撃を避け、再び超常現象を引き起こした。
降り注ぐ雨汁の一滴、一滴を鋭いつららに変えた。伝説に会った槍の雨だ。
「・・・!!!」
腕を突き出すとともに一斉に降りかかってくる。しかし、
「はぁ!はぁぁぁぁぁぁ!!」
ジンジャーは降り注ぐ槍を素手で次々とたたき折り、さらに重力波でシールドを作って防ぎきった。
「!・・・---!!!」
しかし今度は巨大な氷の塊を落としてきた。
ジンジャーは跳躍して避け、そのままグリフィンを地面にたたき落とした。
グリフィンは勢いよく地面に叩きつけられ。対するジンジャーは綺麗に着地する。
しかし、
「なにっ!?」
突然地面が盛り上がり、ジンジャーの足を固めた。
そのすきにグリフィンは空中に浮かびあがり、重力波を纏ったドロップキックをしかける。
「くっ!!」
ギリッと歯を食いしばり、同じく重力をまとった、両腕で、受け止めようとする。
「・・・!!!」
「ぐっ、・・・うわぁぁぁ!」
しかしやはり止め切れず吹き飛ばされた。
ジンジャーは地面を転がりながらも次の手として、最初の姿に戻る。次来るであろう技にはこちらでないと対抗できないからだ。
「・・・!」
「はっ!」
二匹が同時に構えをとる。グリフィンは頭上で腕をクロスさせ、ジンジャーは胸の前で拳をぶつける。
「・・・・・・・!!」
「コォォォォォォ!!」
そしてそれをゆっくり開いていき、グリフィンは両足に雷を、ジンジャーは両腕に水流をまとう。
「―!!!」
「はぁぁ!!!」
お互いのオーラが強まる。影が火柱になったかのようだ。
さらに降り続いていた雨が唐突にやんだ。まるで・・・、天が彼らに恐れおののいているかのように。
ズゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!
お互いのオーラが解放される。心弱きものならショック死してしまうほどの恐怖。
それがちょうど中央で激突し、ビリビリとした感触が伝わってくる。
お互い少しでも力を抜けば押し返される。だがお互い硬直状態に業を煮やして、突進する!
ズドォォン!!!!
二匹の接触とともにオーラがはじけ、地面を抉る。そしてオーラの渦の中から、がっちり組み合った二匹が現れた。
「・・・!!!」
相撲のように押し合う中で、グリフィンがジンジャーの肩に咬み付いた。鋭い痛みが走る。
「ぐっ・・・。グリフィン!君がこの技を使ったってことは、君はまだ君なんだ!」
「だから思い出してくれ!君自身を!!」
「!!」
そのときだ、一瞬だけグリフィンの力が弱まった。
「!てりゃぁぁぁぁぁ!!!」
ジンジャーはそのすきに取っ組み合いを解くと、腹に拳をつきたてる。
「はぁぁぁぁぁ!!!」
さらにまとった水流を噴射し、グリフィンを吹き飛ばした!
「はぁ、はぁ、はぁ・・・。」
しかし、グリフィンは起き上がってきた。
だが、動かない。ただただ虚空を見つめている。
「グリフィン・・・そうだ!」
ジンジャーは急いで近くの木の葉を拾ってきた。
(俺に吹けるだろか・・・?いや下手でも聞こえれば何かあるはずだ!)
彼は草笛に口をあて、グリフィンと亡き姉が吹いていた曲、角猫一族の子守歌を吹き始めた。