最終決戦へ
「敵のアジトを襲撃すべきです!族長!」
バレットは言った。戦闘が終了してすぐ、一族は緊急で集会を開いた。
あの後、レギオンは五日後に山頂近くの境界線にあるエリアを指定し来た。そこで決着をつける気なのだ。
「駄目だ。バレット。境界線に見えない壁が張られてる。俺たちでは突破不可能だ。」
追撃部隊の一匹が答えた。
「父さん。俺が行きます!俺が勝てば、この戦いに決着がつけられる!」
「しかし、・・・リスクが大きすぎる。お前が負ければ全てが失われるんだぞ!」
「賭けに乗るわけにはいかん。」
「でも、もう手はこれしか!!」
「…。最悪、ここを捨てればいい。」
「なっ!?」
一族がざわめく。自分たちの族長がこの山を捨てると!?
「分からないか?負ければ、俺たち全員を奴らは殺すかもしれない。最悪もっとひどいことだってなりうる!!」
「っ!!」
リーフの怒声交じりの声で一族が静まる。
「俺だってここを捨てるのは嫌さ。だが、この山を出ても角猫一族が終わるわけじゃない。」
沈黙がキャンプに広がる。
「あるのですか、この山以外に、俺たちの、・・・安住の地は。」
バレットがうつむいたまま問う。
「楽園を追い出されたなら、・・・自分の足で探せばいい・・・。」
一族のほとんどの者が半ば、あきらめかけていた。自分たちは負けたのだ・・・と。
(・・・でも・・・・・・。)
ジンジャーは思う。
(違う。だめだ。だめなんだ。こんな終わり方!!)
「駄目だ!!!!」
突然の叫びに驚いて視線が集まる。
「だめだよ、こんな終わり方、・・・こんな風にいがみ合ったまま逃げるなんて駄目だ!!」
「ここを出たって俺たちが安心して暮らせるかどうかわからない。」
「それにレギオンは俺の兄さんなんだ。話せば分かりあえるかもしれない。」
「それなのに、・・・何もせず終わっていいはずがない!!」
「ジンジャー!!」
リーフが厳しい口調でジンジャーに問う。
「お前は、自分が何を言ってるのかわかってるのか!?お前、一族全ての命を、・・・いやそれ以上のものを背負うと言ってるんだぞ!!」
「覚悟の上です!!」
強いまなざしでジンジャーが答える。
「大丈夫ですよ。俺が支えます。」
グリフィンが続く。
「お前は俺を救ってくれた。今度は俺が助ける番だ!!」
「グリフィン・・・!」
「お前を支えるのはこいつだけじゃない。俺も居る。」
「バレット・・・。」
二匹がジンジャーの隣に座り、一族に向かい合う。
「・・・分かった。お前の覚悟・・・形にしてみろ。」
リーフはそういうと、一族に言った。
「みんな、すまない。俺の息子を、・・・信じてくれ!!」
そして、
「・・・じゃあ、行ってきます。」
決戦の日が来た。
「部族のことは俺と族長でなんとかする。安心していって来い行って来い。」
安心などできるはずもないが、ジンジャーはできるだけ笑顔を作っていった。
「ええ。お願いします。バレット。」
「じゃあ、行くか。ジンジャー。」
グリフィンが言った。この五日間、力の特訓につき合ってくれた彼は、この戦いを見届けるため、共に行くのだ。
二人の後姿を見ながら、バレットは言った。
「・・・必ず戻って来い。そのために俺はここに残ったんだ。」
「なあ、ジンジャー。」
「はい?」
グリフィンは真剣な表情で言った。
「正直に言うとさ。俺には友達ってのはいなかった。」
「旅をしてる身だし、居なくてもともとだと思ってた。」
「けどお前は、俺の・・・初めての友達かもな。」
ジンジャーはその言葉に最高の笑顔で答えた。
「ええ。俺も、バレットもグリフィンの友達です。」
「俺たち三匹はいつだってグリフィンの味方です。」
「三匹・・・?」
「ええ。俺と、バレットと、・・・姉さんです。」
「!!」
「姉さんはいつでも、グリフィンの心の中で、生きています。」
「ジンジャー・・・。」
ジンジャーがコクリとうなずく。
「死ぬなよジンジャー。お前の夢を叶えて、帰ろうぜ。」
ジンジャーは笑顔でうなづき、拳をグリフィンとコンッとぶつけて、言った。
「はい!見ててください、グリフィン。これが、・・・俺の戦いです!!!」