キャンプの激闘、前篇
―数ヶ月前、ハイストーンズ―
「見つかったのか?」
赤茶色に黒い縞の雄猫がもう一匹に話しかける。
「ああ。この二匹ならきっと今回の災いから彼らを守ってくれるだろう。」
話しかけられた一匹、漆黒の体に細かな白い斑点を持つ雄猫が答えた。
「本来ならば我らが彼らを導かねばならんというのに…な。」
「しかたないさ、メテオスター。今回ばかりは俺たちも彼らを気遣う余裕がない。」
「ああ…分かっている、友よ。さあ、この天上の森、守りとうさねば。」
「ああ、やがて来る者たちのためにもな。」
銀色の光を纏う彼らはそう言って天と地をつなぐ聖地を去った。
「……。」
ファイアハートは少し考え事をしていた。あの浮浪猫たちがなぜ、サンダー族を執拗に狙うのか?ブロークンテイルの奪還か?それとも…。
夢でスポッティドリーフに聞いてみようと思ったが彼女は現れなかった。
自分で考えろということだろうか…?
「どうかしたの?」
気がつくとサンドストームが隣にいた。
「ああ、いまちょっと考え事してて…。」
「…あいつらのこと?」
「うん。なんであんな執拗に僕たちを襲うのかなって。目的は何なんだろう?」
「二匹はもともとブロークンテイルの部下だったんでしょ?リーダーの奪還じゃないの?」
「それは僕も考えたけど、二匹は僕たちがシャドウ族を襲った日に一族を出て、その後すぐにブロークンテイルに襲いかかったそうじゃないか。」
ブロークンテイル本人の話によれば持っていた命のいくつかを奪われたらしい。
「じゃあ、ブロークンテイルに止めを刺したいのかも。」
「どうかな、あの二匹の口ぶりじゃもう興味なさそうだったよ。」
「じゃあ、一体…。」
「大変だ!二人とも!」
直後、ダストペルトが飛び込んできた。みると肩を少し切られている。
「ダストペルト!?どうした!?」
「アイツらが、アイツらがキャンプを襲ってきた!今入口近くで先輩たちが戦ってる!」
「急ごう!」
三匹は勢い良く外に飛び出した。
見る見るうちにキャンプは戦場と化した。
ファイアハートはその中にクラッシュテイルを見つけた。誰かを探すようにあたりを見回している。
ファイアハートは飛びかかったが敵は難なくそれをかわした。
「答えろ!なぜ、サンダー族を狙うんだ!」
「ふんっ!決まってるだろ?イライラするんだよ、お前らは。」
イライラする。そんな理由で相手を傷つけていいのか?こんなにも。
いや、いいわけがない。ファイアハートはこの敵に激しい怒りを覚えた。
「そんな理由で!」
クラッシュテイルはファイアハートの攻撃を捌き、狂気の笑みを浮かべた顔を近づけて言った。
「他に理由が必要か?」
尻尾の刃による突きをすんででかわし、相手を睨む。
「お前はお呼びじゃないんだよ、死ね!」
一度振り回して勢いをつけた刃が迫る。
ギィン!
突如灰色の物体が通り過ぎ、刃をはじいた。
「悪いな、ファイアハート。こいつのご指名は俺だ。」
「グリフィン!」
「俺に任せな。」
「…分かった。たのんだよ。」
ファイアハートは素直に身を引いた。
自分の力を過信しない。いい心得だ。
しかし、パトロールから戻っていきなり戦闘かよ。
「はっはっは!待ってたぜ、グリフィン。」
「それは悪かったな、Mr。」
グリフィンは相手の引っ掻きを捌きながら言った。
「さぁて!往生しな!」
グリフィンは決め台詞を言って気合を入れた。激闘が今、始まる。