星を統べる流星

 

キャンプに戻った二匹はすぐにグレーストライプとジンジャーに会った。

 

「なにっ!?アナグマに襲われた!?」

「うん、ジンジャーがあっという間に追い払ったけど。」

 

狩りに出かけていたグレーストライプはクモの巣の補充を探していたジンジャーとばったり出くわしたという。そしてその帰りに一匹のアナグマに襲われたというのだ。

 

「て言うか…ジンジャー。」

「はい?」

「君って…ほんとに看護猫なの?」

「ええ、俺看護猫です。なんでですか?」

「いやさ…君やったら強いし。」

 

ファイアハートが疑問に思っても仕方ないだろう。確かにジンジャーは普段長老の世話をし、イエローファング達を手伝っている。

しかし、戦闘になれば武道の達人のごとく動きで敵を倒すのだ。

 

「ははは、そりゃそうさ。なんせこいつは角猫一族族長の息子にして時期副長候補って言われた優秀な戦士だからな。」

 

グリフィンが尻尾でジンジャーを指しながら言った。

「まあ、途中で看護猫の道に憧れて両方を兼任した末こっちの道に来たんですけどね。」

 

ジンジャーが薄く笑みを浮かべる。

 

「そういえばぼくも疑問に思ってたことがあるんだ。君が戦う時に使ってるあの技はなんだい?」

 

今度はグレーストライプが聞いてきた。

 

「ああ、あれはうちの一族に伝わる拳法みたいなものです。」

「ケンポウ?」

「はい。幼いころから感覚を鍛える訓練をして、体を鍛えて身につける技です。」

「君の一族は爪を使わずそのケンポウって言うので戦うのかい?」

「ああ、爪を使わないのは俺だけです。」

「…え?」

「嫌なんですよ。爪使うの。」

「…。」

「だって…血が出ますから。どうしても戦わなきゃならないときは戦うけど爪だけは絶対使わないって決めてるんです。」

「それが、看護猫としてのこいつのポリシーなのさ。」

 

 

 

暗がりの中で肉を割く音と骨をかみ砕く音が聞こえる。こちらの存在に気付いた奴がゆっくりとその赤く染まった犬歯を見せながら振り返った。

「兄貴も食う?まあ、食わないだろうナ。」

耳障りでイラつく笑い声をあげながら弟、クローファングはどこかの野良猫をまた一口かじった。

 

「ちっ、だまれ!イラつくんだよおまえの笑い方は…!!」

「キシャシャシャシャ!!俺が兄貴を食ったっていいんだゼ?」

二匹はしばらく睨み合ったがどちらも襲いかかることはなかった。

けして中が良いとは言えないこの二匹が喧嘩で勝敗がついたことはないのだ。

 

「・・・・・・・フンッ、明日の大集会を襲撃するいいな?」

「大集会カ…どんなんだろうね?俺ら一度も行ってないしサ?」

「それをぶっ壊せばもっと面白い。」

クラッシュテイルが残忍な笑みを浮かべる。

「フぅん…ま、俺も族長のニクを食ってみたくなったし、ちょうどいいか。」

闇の中に銀の刃と狂気の瞳が光っていた。

 

 

 

(どこだここは!?)

グリフィンはあたりを見回した。気付くと見たこともない場所に寝ていた。

いや、見覚えがある。よくは知らないが確か、四本木とかいうところだ。

「なんだってここに…。」

「グリフィン!」

声が聞こえた。ジンジャーだ。

 

「ジンジャー!お前…ここまでどうやってきたか覚えてるか?」

「わからない。俺も起きたらここに…。」

四本木…そういえば明日大集会とかいうイベントがあってメンバー選びにブルースターが悩んでたな。

 

(これは夢か?にしちゃリアルだが。それになんでジンジャーが?)

グリフィンが歩き出そうとしたその時だ。

 

「“さすらいの翼猫”グリフィン。そしてジンジャー、“縄張りなき看護猫”よ。」

 

二匹が声のした方向を振り返るとそこには。

漆黒の毛に白い点をちりばめたさながら夜空を切り取ったかのような猫が、銀色のオーラを発し、岩の上に座っていた。

 

「ようこそ、お初にお目にかかる。」

 

黒猫の口調は優雅で顔立ちもどこか高貴な雰囲気を出していた。

 

「あんた…何者だい?」

 

グリフィンの問いに黒猫は強さと威厳のこもった声で答えた。

 

 

「我が名はメテオスター。星を統べる者なり。」