大集会は血に染まり
「自分で獲物を捕まえられる年齢の者はみんな集まりなさい。一族の集会を始めます。」
ブルースターの声がキャンプに響いた。ハイロックの下に一族の仲間たちが続々と集まってくる。
「今回、マンティスキットはめでたく生後六カ月を迎えました。本日よりあなたは戦士の名を獲得するまでの間、マンティスポーとして修練を積みなさい。」
「マウスファー、この子はあなたに任せるわ。一人前の戦士にしてあげて。」
こういった儀式は初めて見るが、いいもんだなとグリフィンは思う。
(いい顔だ。絵になるぜ。)
保育部屋のメンバーの中でも、マンティスキット、いやマンティスポーは自信もよく可愛がっていたからひときわうれしい。
(子供の成長をみる父親の心境ってか?っとなんかジジ臭いな。)
任命の儀式が一通りいくと、今夜の大集会のメンバーが発表になった。
「あの猫たちが私たちの不在の隙をつく可能性があります。よって今回は、タイガークローにホワイトストーム、ラニングウィンドとダークストライプ、ダストペルトを連れていきます。残りの者はキャンプの警護を。」
なるほど、この編成なら大半の戦力が残るし、仮に向こうで何かあってもあいつらならなんとかやれるだろう。
昼の集会はこうしてお開きになった。
夜になった。入口で見張りをしていたファイアハートはブルースターたちを見送ってからどうしようもない不安に駆られていた。
クラッシュテイル達のこともそうだが、タイガークローのことも気がかりだった。
(大丈夫、ホワイトストームたちがついてるし、きっと元気に帰ってくるさ。)
それでも不安はつのるばかりだった。
「…また最近我が部族のなわばりに、かつてないほど攻撃的な浮浪猫が現れました。他の部族も注意してください。」
ブルースターはそこまでしゃべると演説代から降りようとしたその時だ。
「なんだ、アイツは来てないのか…まあいい。ここまで頭数がそろえばそれなりに楽しめる。」
四本木につまらなそうな声が響いた。
「誰っ!?姿を見せなさい!!」
4部族が警戒しながらあたりを見まわす。
次の瞬間!!
ダンッ!!!
何かが四本木の松の上から襲いかかってきた。
ブルースターがあわてて飛びのくとさっきまで彼女のいた場所に冷たい刃が突き刺さった。
「ふん・・・。」
刃を引っこ抜く雄猫の姿を見てシャドウ族が息をのみ、ウィンド族が一歩退いた。
「お前・・・、お前はクラッシュテイル!」
「久しぶりだな、ナイトぺルト、いやナイトスター。」
「どういうともりだ。何の真似だ!」
「決まってるだろ?祭りを盛り上げに来たのさ、元・師匠。」
それを機に、松の木や空き地の周辺にどっと猫たちがなだれ込んでくる。中には首輪をつけたものも混じっている。
「-!二本足の縄張りの連中を取り込んだのか!」
「さあ!血染めの大集会の始まりだ!!」
族長たちは自分の部族と合流するため、急いで飛び降りる。クラッシュテイルはあえてそれを阻まず、楽しげに笑っていた。
「そうだ、戦え!そして俺を楽しませろ!」
クラッシュテイルがサンダー族の陣地に飛び降りる。
すぐにタイガークローたちがそれを包囲し、ダークストライプとダストぺルトがブルースターの守りについた。
「三対一か・・・準備運動にちょうどいい!」
クラッシュテイルがタイガークロー、ホワイトストーム、ラニングウィンドを相手に戦い始める。
クラッシュテイルは自慢の俊敏さを生かして正面のタイガークローを攻撃し、皿に尻尾でラニングウィンドを殴った。横から攻めてきたホワイトストームが抑え込もうとしたが、跳躍してこれを交わすと、空中で回転しながら落下し、峰をホワイトストームの頭部に叩き付けた。
「つまらん・・・真面目にやれ!」
苛立つクラッシュテイルの背後を狙って、タイガークローが攻めかかるが、敵の尻尾が飛んできてガードの前足を切りつけ、首筋の毛を刈り取る。
「ぐぅ・・・おのれ・・・!」
「嫌な予感がするな…。」
グリフィンは四本木の方向を見つめて、飛び立とうとした。
「待つんだグリフィン。」
不意に呼び止められた。ファイアハートだ。
「どこに行くのさ。こんな夜中に。」
「何、ちょっと嫌な予感がするから、向こうを見に行こうと思ってさ。」
「嫌な予感・・・?まさか・・・。」
その時だ。
「グリフィン大変なの!大集会が…皆が!」
マンティスポーが入口から飛び込んできた。肩で息をしている。
「マンティスポー!?いつの間にキャンプから!?」
「なんかやな感じがして…こっそりキャンプを抜けてブルースター達のあとをつけてったの…そしたら、アイツラが・・・。」
グリフィンとファイアハートは顔を見合わせた。
四つの部族はじりじりと撤退をしていた。
現在、クラッシュテイルとナイトスターが戦っているが、明らかに劣勢を強いられている。今もまた、クローファングの牙に誰か…おそらくリヴァー族の猫がかみ殺された。
リーダー格の二匹を除けば一匹の戦闘能力は高くないが、必ず二対一、三対一で襲ってくる。
サンダー族は完全に孤立し、ピンチに陥っていた。
タイガークロー達は何匹かを倒したが、物量という最強の力の前に、次第に疲労していった。まさに絶体絶命。
(何とかして脱出を・・・)
しかし彼らは襲い来る波に飲まれていった。