参戦、再会

 

 

「さぁて、往生しな!」

 

グリフィンは決め台詞を言うと、かぎ爪を構える。

 

「はっ!いくぜ!」

 

クラッシュテイルが尻尾の刃で切りかかる。

 

グリフィンは冷静にそれを受け流し、カウンターを決める。クラッシュテイルの口の中が切れ、出血する。

 

「ふぅん…。」

 

自身の血を見て敵はニヤリとほそくそえんだ。

 

「ハァァ!」

 

再び尻尾が繰り出され、間髪いれずにかぎ爪が襲いかかる。

 

(なるほど、攻撃速度の速さを生かし、カウンターを封じるつもりか。)

 

確かに、返し技を得意とするグリフィンにはやりづらい状況だ、だが…。

 

「ハッ!」

 

グリフィンは尻尾の一撃をはじき返し、できた一瞬の隙にボディ打ちを食らわせる。

 

「隙がないなら作るまでだ。」

 

「フンッ!久々に楽しめそう、だっ!」

 

敵の嵐のような連打に、グリフィンは下がりながらカウンターをなん発かいれる。

 

(時間がないな。ここは一気に大技だ…!)

 

敵のアッパーをバック転でかわし、技の構えをとる。

 

「フィナーレだ!お祈りでもしてな!」

 

グリフィンは両後ろ足で地面を蹴ると、翼を広げ高く飛翔する。

しかし、

 

「フンッ…ハァ!!」

 

クラッシュテイルも地面を蹴り、飛び上がる。その高さはグリフィンに劣らない。

 

(!!だが、空中ならば!)

 

グリフィンは一度羽ばたいて高度を上げ、かぎ爪でたたき落とそうとする。

 

(これで―!)

 

「シャァァ!」

 

「-!がっ…!?」

 

予想外のことだった。敵は空中で体を丸めて前転し、刃のみねでグリフィンの頭をしたたか殴りつけたのだ。

 

「ぐぅ…!」

 

グリフィンはバランスを崩し、地面に墜落してしまった。

 

(俺としたことが、ぬかったぜ…。)

 

敵のジャンプ力を見たときに、身軽さも視野に入れるべきだった。

 

「ククク…!」

 

地面に着地した敵がにやけながら寄ってくる。

 

(強敵だ…だが負けられん!)

 

グリフィンはガンガンする頭で立ち上がり、再び対峙した。

 

「これは!」

 

風に交じってきた戦いの匂いをファイアハートは感じ取った。

 

「こそ先の要ですね。」

 

隣にいたジンジャーが答える。

 

「ジンジャー、ここで待っててくれ。危険だ。」

 

「いえ、俺も行きます。怪我人がいるかもしれませんし。」

 

「けどっ―!」

 

「大丈夫です。俺だって戦えます。だてで旅はしてません。」

 

「…気をつけてくれ。」

 

二匹は急いで駆け付けると、前回同様河原で猫たちが争っていた。

 

「やっぱりあの時の―!」

 

こちらに気付いた何匹かが二匹を包囲した。

 

「ジンジャー―!」

 

「俺も戦うしかないですね…!」

 

ジンジャーが荷物を下ろし、後ろ足で立ち上がる。

 

「フゥ~…ふんっ!」

 

深呼吸の後、両前足をやや開き、爪は出さずにどっしりと構える。

 

(なんだ?あの構えは)

 

ファイアハートは敵と戦いながら見慣れぬ構えに疑問を覚え、そして驚いた。

 

「はっ!やっ!せい!」

 

ジンジャーが恐るべき正確さで敵を殴り、投げ飛ばした。

 

(これが、彼の力…?)

 

ファイアハートは看護猫とは思えぬ戦いぶりに息をのんだ。

 

 

 

 

「うわぁ!」

 

グレーストライプは地面を転がって止まった。

 

「キシャシャシャシャ、ほらもっと頑張れヨつまんないだろう?」

 

(くそっ、コイツ…!)

 

さっきから何度も攻撃しているが全く聞いていない。こいつは化けものか!?

 

グレーストライプは立ち上がり、振り下ろされた敵の腕をかわした。奴は恐ろしい怪力だ。

 

(なら…!)

 

グレーストライプは速さを生かし、敵の背中に飛び乗ると首を思いっきり噛んだ。

 

「ッ!キ~シャ~ア!」

 

「!!-ぐはっ!」

 

敵は体を跳ね上げ、背中を地面にたたきつけた。牙をつきたてたグレーストライプは逃げられず、押しつぶされてしまう。

 

「シャァァァ!」

 

「うぅ!」

 

クローファングが体を起こし、グレーストライプをその大きな前足で踏みつけた。

 

「う…ぅ…く…そ。」

 

グレーストライプは最後の抵抗と、クローファングを激しくにらむ。

 

「キシャシャシャシャ!何をそんなに怒ってるのか知らないけどさ~。」

 

「怨むんなら羽根付きの言うことをきかなかった自分を怨めヨ?お前一人で勝てるわけないんだからさ~。」

 

キシャシャシャシャ!と壊れた笑い声とともに、牙をむき出す。

 

(ファイアハート、シルヴァーストリーム、ごめん…)

 

グレーストライプが無念の涙とともににあきらめかけたそのときだった。

 

「友達を離せ!」

 

視界にショウガ色の何かが飛び込み、クローファングにタックルを食らわせた。

 

「グレーストライプ!しっかりするんだ!」

 

涙でぼやけた視界がクリアーになるにつれ、それは姿を現した。

 

「ファイア…ハート…?」

 

「うん、そうだよ僕だ!」

 

「どうして?」

 

「説明は後だ。今はこいつを―!」

 

「シャシャシャ、この前のニク、やっぱり生きてたカ。うれしいゼ。」

 

二匹は立ちはだかる狂戦士に立ち向かっていった。

 

「ハッ!フンッ!」

 

「てい!やっ!」

 

グリフィンとクラッシュテイルは一進一退の攻防を続けていた。途中、ファイアハートが見えたが驚く暇も、喜ぶ余裕もない。

 

だが、もう一ついいことが起きた。サンダー族の応援が来たのだ。

 

「クラッシュテイル!」

 

応援部隊を率いていたタイガークローが二匹の間に割って入り、戦い始める。

 

「タイガークローか、今いいとこなんだよ、邪魔するな!」

 

クラッシュテイルが苛立ったようにタイガークローの足を尻尾で払い、体勢を崩したところに体当たりを食らわせた。

タイガークローが川に落ちたが、浮かび上がって岸に向かって泳ぐのが見えた。だがおかげで隙ができた。

 

「ありがとう、タイガークロー。この隙は逃さん!」

 

グリフィンは飛翔すると、ドロップキックの体勢をとる。

 

「今度こそフィナーレだ。こいつを食らいな!」

 

必殺キックは見事命中し、クラッシュテイルを大きく蹴り飛ばす。

 

「ぐっ…イラつかせる…!」

 

クラッシュテイルは捨て台詞を残して逃げた。

(何とか追い払ったか。できればあまり出くわしたくない奴だぜ)

 

「キシャシャシャシャ!シャ~ガッー!」

 

「うっ!」

「くっ!」

 

クローファングの猛攻にファイアハート達二匹は防戦一方だった。敵はアナグマのようなパワーと勢いでこちらを圧倒する。

 

しかし、

「はっ!」

「シャガッ!?」

 

クローファングが吹っ飛んだ。ジンジャーのパンチを横から受けたのだ。

 

「ジンジャー!」

 

「下がってください二人とも!ここは俺が受け持ちます!」

 

「誰だ!?それにコイツの強さは―!」

 

グレーストライプの言葉をファイアハートが尻尾で遮った。

 

「ジンジャー、任せるよ!」

 

「任されました!」

 

ファイアハートの願いに、ジンジャーは笑顔でうなずいた。

 

 

「ふんっ!」

 

ジンジャーの表情は敵と向き合った瞬間、真剣なものになる。

 

「シャシャシャ♪羽の次は角か~なんでサンダー族にはこんな面白いのがいっぱいなのかなぁ~♪」

 

クローファングは楽しそうに飛びかかる。

 

ガシッ!!

 

二匹が立ち上がったままがっちり組み合う。

 

(…強い!なんて馬鹿力だ!)

 

ジンジャーは冷や汗を流した。事実彼のほうが少し押し負けている。彼は素早く取っ組み合いを解くと、ガラ空きの胴に連続パンチを見舞う。

 

「ぐ、うぅ。」

 

「戦闘には技も必要です。」

 

「シャ…シャァァァ!」

 

突進してきた敵に対し、ジンジャーは技の構えをとる。

目を閉じ、ゆっくり息を吐いて…開くと同時に強烈な右ストレートを放った。

 

「グッシャァァ!」

 

クローファングは悲鳴を上げて逃げた。

 

 

 

「それじゃあ、あなたがファイアハートを?」

 

数分後サンダー族のキャンプにグリフィン達は戻っていた。

ファイアハートがブルースターにこれまでのことを報告している。多分ジンジャーもしばらくここに残ることになるだろう。

後でゆっくり話がしたい。

 

(しかし、まあファイアハートを助けたのがアイツだったとはな。)

 

旧友ジンジャーとこんなところで再開するとは。

 

(噂をすればやってくるってか?)

 

なんにせよ、ファイアハートが生きていたことがうれしい。

 

サンドストームに至っては涙ぐみながら体を寄せていた。ふっ、ファイアハートにお熱に違いない。

 

友人の生存と親友との再会。今日はよく眠れそうだ。