不吉な兆候
リーフプールはざわざわする声に目を覚ました。
まだ夜が明けたばかりだった。
なにごとだろうかと看護部屋から顔を出すと、空き地には猫たちがあわてている様子が見えた。
向かい側の戦士部屋からスクワーレルフライトがかけてきた。
「リーフプール」
スクワーレルフライトが息を切らしてやってきた。
「どうしたの? みんな、様子が落ち着いていないわね」
「ミスティキットとレッドキットとフロストキットがいなくなっちゃったの!」
リーフプールは目を瞠った。
なるほど、だから皆落ちつきがないのか。
「捜索隊は?」
「ファイヤスターがさっき、グレーストライプとブラクンファーとホワイトクローとブランブルクローを送り出したわ」
「いつ気づいたの?」
「夜が明ける少し前…だったと思う。ウィングフットがすこし水を飲みに保育部屋を離れて、帰ってきたときには三匹ともいなかったらしいわ」
ウィングフットはいなくなった三匹の茶色が混じった白っぽい母猫だ。
いなくなったことに気づいた時のウィングフットの気持ちを考えると、胸が締め付けられるようだ。
その三匹が、無事でいてくれるといいが。
「ウィングフットは?」
リーフプールがたずねた。
「じっとしてられないらしくて、ナイトファングと一緒に探しに行ったわ」
スクワーレルフライトがじれったそうに足を動かした。
「今、森は危険なのに。仔猫だけで行っちゃったら…」
リーフプールも同感だった。
オークファングが倒されるほどの生き物だ。
仔猫はひとひねりにちがいない。
「早く見つかるといいわね…」
リーフプールはうなずき、つぶやいた。
その時、看護部屋の横にいたモノトーンの二匹が看護部屋へやってきた。
「話、聞こえたよ」
ニコルが言う。
ホーリーナイトはあいかわらずで、興味なさそうにしっぽの毛づくろいをしている。
「まだ、三匹は小さいのに…」
スクワーレルフライトが言う。
「僕たちは、探すのを手伝っちゃいけないのかい?」
ニコルが提案する。
「ファイヤスターに許可をもらえば、いいと思うわ」
リーフプールがそれに答える。
「私も一緒に行くわ」
スクワーレルフライトが立ち上がる。
「そう決まったら、早く行きましょ。早く仔猫たちを見つけなきゃ」
ニコルも立ち上がり、ホーリーナイトをつつく。
ホーリーナイトがニコルを横目で見る。
「俺も行かないといけないのか」
「仔猫たちが危険なの! お願い手伝って」
スクワーレルフライトが懇願する。
その声にホーリーナイトはため息をつき、立ち上がった。
ホーリーナイトは確かに無愛想にしているが、根は優しいんだな、とリーフプールは思った。
めんどうくさそうにしていても、最後は手伝ってくれる。
看護部屋を出る三匹に、リーフプールは声をかけた。
「気をつけてね」
スクワーレルフライトとニコルが振り返ってうなずき、ホーリーナイトはそのまま何も反応せず、ファイヤスターの部屋へ向かった。
ミスティキットとレッドキットとフロストキットが、次の被害者になりませんように、とリーフプールは祈った。
不吉な兆候だとは思いたくなかった。