来訪者は…?
ニコルという猫が来た次の朝、リーフプールは、早く目がさめた。
ファイヤスターは、ニコルをおいておくことにした。
ニコルは看護部屋を出たら、横の倒木のところで寝ていた。
その白い姿を見て、リーフポーは思い出した。
ファイヤスターにスクワーレルフライトが見たという夢を報告しないといけないんだった。
忘れないうちにいこう。
そう思い、族長の部屋へ向かった。
部屋の前に着き、まだ寝ていたらいけないとうろうろしていたら、リーフプールの気配を察知したらしく、なかからファイヤスターの声がきこえてきた。
「もうおきてるぞ。何か用があるのか?」
少し含み笑いのような声だった。
リーフプールはなかへ入った。
「朝早くにごめんなさい、ファイヤスター」
「いや、少し前に起きていたから大丈夫だ」ファイヤスターが答えた。
「どうしたんだ?」
リーフプールは控えめに話し出した。
「実は、昨日スクワーレルフライトが夢を見たと言っていて・・・。それが、お告げかもしれないの」
ファイヤスターはリーフプールの目にしかと目を合わせてきた。
「どんな夢だったといっていた?」
「暗い森の中で、猫の影が『はぐれものが来る。多くの血が流れる』といったらしいわ。そして、そのあと何かが追いかけてきたと言っていたの」
そこまで話した時、ファイヤスターの緑色の目はかっと見開かれていた。
リーフプールは驚いた。
いつも冷静なファイヤスターがここまで驚きをあらわにするとは。
「『はぐれ者が来る。多くの血が流れる』本当にそう言っていたんだな?」フ
ァイヤスターがきいてきた。
「ええ、私もスクワーレルフライトに確認したわ」
リーフプールは答えた。
少し間が空いて、ファイヤスターが話し出した。
「実は、俺も今朝夢を見たんだ。」
ファイヤスターはそこでいったん生唾を飲み込み、つづけた。
「俺にも『はぐれ者が来る。多くの血が流れる』。それがきこえた」
リーフプールは驚いた。
さっきファイヤスターが驚いたの理由もわかった。
ファイヤスターもスクワーレルフライトと同じお告げを受けていたんだ。
「俺も暗い森の中にいて、その声をきいた。そのあと俺が見たのは、白い毛だった」
リーフプールは真剣に聞いた。
「そこで、俺はちょっと引っかかったんだ。なんだかわかるか? リーフプール」
ファイヤスターが質問してきた。
リーフプールは首をかしげた。
「白い毛で、はぐれ者」
ファイヤスターはそういい、間を空けてつづけた。
「今、まさにそれにあてはまる猫がいる」
リーフプールは気づいた。
「ニコル・・・のこと?」
ファイヤスターはうなずいた。
「まだはっきりと決まったわけじゃないが・・・。あの猫をキャンプに残すと決めたが、それでよかったのかも、よくわからない」
リーフプールはスクワーレルフライトの夢で話していなかったことが残っていることに気づいた。
「ファイヤスター、でも、スクワーレルフライトは別のものを見ていたの」
リーフプールは忘れていたことを反省しながら話した。
「スクワーレルフライトは、白い牙と黄色い目を見ているわ」
スクワーレルフライトの夢には、ニコルはあてはまらないはずだ。
ニコルはガラスのような青い目をしている。
ファイヤスターが顔をしかめた。
「なら、ニコルにはあてはまらないな。 ・・・・・・だとしたら、なんのことだ? 黄色い目の白猫は、普通にいるが・・・。いずれもどこかの部族に属している」
リーフプールはいった。
「まだ、現れていないのかもしれないわ」
ファイヤスターは苦い顔のまま答えた。
「そうかもしれない。でも、用心しなければ。パトロール隊に浮浪猫に気をつけろといっておこう。それと…スクワーレルフライトno
夢を信じないわけではないが…一応ニコルも警戒しておこう」
リーフプールはうなずいた。
自分はニコルではないきがするが、用心するに越したことはないだろう。
ファイヤスターが声をかけてきた。
「そういえば、ソーレルテイルの子どもたちは元気かい?」
リーフプールはうなずき、答えた。
「母子ともに健康、今朝、私も太鼓判を押してきたわ」
ファイヤスターは喜んでいるようで、しっぽを大きくゆり動かしながら答えた。
「楽しみだ。あと数ヶ月したら指導者も考えなければ」
「ファイヤスター、私はそろそろ行くわ」
リーフプールは声をかけた。
「ああ、報告ありがとう、リーフプール。おまえはとても頼りになる看護猫だ。感謝してるよ」
ファイヤスターの言葉に、リーフプールはまばたきで感謝を伝え、部屋をあとにした。