二本足のすみか
ファイヤハートはキャンプをこっそり抜け出した。
グレーストライプは風邪で安静にしてるし、
見習いたちも、狩りの訓練を終えて休んでいる。
吉祥は・・・ 別にいいや。 キャンプにいなかったし。
ファイヤハートは、時々止まってキョロキョロと、あとをつけている猫がいないか確認した。
そして、ファイヤハートは、二本足の家のフェンスに一跳びで飛び乗った。
そう。抜け出した理由は、姉のプリンセスに会うためだった。
一応、フェンスの上から、森を確認する。
だれもついてきてはいないようだった。
ふと、どこからか、楽しそうな猫の笑い声が聞こえた。
見回してみるも、どこで笑っているのかは分からない。
ファイヤハートは、その笑い声と話し声が2匹の猫によるものであることと、その片方がプリンセスのものであることを聞きわけた。
となると、他の家の飼い猫と談笑でもしているのか?
ファイヤハートは大人しく戻ることにした。
用があるのはプリンセスであって、他の飼い猫と仲良くするつもりはない。
フェンスを飛び降りると、ふっと話す声が止まった。
二本足の庭を振り返ってみるも、プリンセスは家の中に戻ることは無いようだった。
諦めてキャンプに戻ろうと・・・
「お、弟発見!」
黒猫が真正面にいた。
「ひゃうぇ!?」
言葉にならない驚きの声とともに後ろに跳び退くも、見事にフェンスに頭をぶつけた。
「いてて・・・」
「イヨッ! 素晴らしい反射神経してるねっ!!」
黒猫が楽しそうに言う。
ファイヤハートは驚かした黒猫に向かって何か言おうと思ったが・・・
「・・・吉祥!?」
「うん? 呼んだ?」
なんと吉祥が普通に2本足のすみかに来ていたのだった。
「…どうしてこんなところに!?」
「いやぁ、情報収集そのほか云々だお。」
そして吉祥がニヤリと笑う。
「ファイヤハートこそ、どうしてここにぃ?」
ぎくり・・・。
「えっと・・ いろいろと理由が・・・ その…」
「まあまあ、そんなに俺Sじゃないし。 勘弁しといてあげるけどね。」
吉祥がファイヤハートの頭を尻尾でポンポンと叩く。
「まあ、森の猫たちの情報じゃこの辺の事は分からないから、飼い猫達にも話を聞こうと思ってね。 特に君の姉に。」
「え・・・」
「プリンセス って言ってたね。 仲の良い姉弟っていいよなぁ。 俺なんて姉から殺されかけ・・・ いやいやこれは別の話。ってか俺のほうが強いしっ!! 末っ子って嫌だわぁ~。」
「何の話だよ・・・。」
「こっちの話。 とにかく・・・ プリンセスさんもこっち来ておはなししましょ。」
吉祥が呼ぶと、姉が庭の草の中から現れた。
「なんでプリンセスの事を?」
「そんなの、ファイヤハートがいつもその事ばっかり考えてるから。 そんなの心読まなくっても分かるよ。 この浮気者っ♪」
「いや、そんな楽しそうに言われてもねぇ。」
「ファイヤハート!! 来てたのね!!」
フェンスの向こうから姉が言った。
しかし、吉祥の前なので、あまり親しく接するのに抵抗があった。
「吉祥と何を話してたんだい?」
プリンセスに聞いてみる。 吉祥に聞いても教えてくれそうにないし。
「いろんなことよ。 この森の周りについてとか、二本足の行動や、あのひとたちがやること、それからあなたのこと!!」
プリンセスは目を輝かせて言った。
何故かファイヤハートの背中を冷たいものが走った気がした。
「ファイヤハートの知られざる過去!!」
吉祥が楽しそうに言う。
「ちょっ・・ や、やめてよ・・・。」
「ファイヤハートは、というかラスティは、母猫のいう事なかなか聞かない子だったんだってね! 他には他には・・・」
「やややややや!! そろそろキャンプ戻らないと怪しまれるからっ!! というかもうやめてっ ほんとダメっ!!」
「あらどうして?」
プリンセスが無邪気に尋ねる。
「だって恥ずかしいから・・・。」
「若い内は、汗かけ恥かけ文をかけって言われてんだ! って、猫は汗は肉球にしかかかないし文も書けないからね。 恥はかいて問題なし!!」
「うるさいっ!! だいたい吉祥も若いでしょう!!」
「残念。 俺生まれてこのかた15年。」
「えええええええええ!?」
ファイヤハートはまだ生まれて1年である。
(20分経過)
「うぅ・・・・」
ファイヤハートは疲れ果てていた。
「情けないぜ? あんぐらいの言い合いでばてちゃうなんて。」
吉祥は足取りも軽く歩いて行く。
途中でちゃっかり仕留めたネズミを咥えて。
喋る元気も無いまま、キャンプへと戻る。
そしてキャンプに入ると、お約束の様にタイガークローが・・・
ではなく、ホワイトストームと目が合った。
「? どうかしたか?」
言われてハッとする。
怒られないかビクビクしていたせいで、ホワイトストームをずっと見ていたようだった。
「いえ、別に・・・。」
「? 何か隠してるのか?」
「いえいえいえっ!!」
「いやいや・・・ その否定の仕方は何か隠してるだろうよ…。 なんだか疲れてるみたいだぞ?」
普段あまり怒らないホワイトストームは、その分相手の事をよく見ている。
「ええと・・・・」
「隠すほど恥ずかしいことでしょうね~。 まあ無理もないけど。」
横から吉祥が乱入する。
「ちょっ!? ちょっと!?」
「ホワイトストームさんでしたっけ? 聞いてくださいな。 ファイヤハートがね・・・」
「吉祥!! それは言うなって!!」
ファイヤハートは止めるが、吉祥はまるで聞いていない。
しかし・・・
「結構強くなったと思うって言ってたから、僕が手合せの相手してあげたら、僕に触れることもできないくらい弱かったのよ。 もっと修行してあげてね。」
「…え? なんのh…」
なんの話? と聞こうとしたが、口が急に閉まり、喋れなくなる。
「ああ、 まだ戦士になりたてだから、弱いのは仕方ない。 しかし、それを恥じるとは、感心しないぞ。ファイヤハート。」
ホワイトストームはすんなりと信じてファイヤハートに軽く説教。
ファイヤハートの口を閉めていた力が消えた。
「でも! ブロークンスターを負かしたり、他にもいろいろ…」
「だが、まだ弱いことは弱い。 それは事実なんだから、それを恥じることは無いはずだ。 また修行してやってもいいが、俺も暇じゃないんでな。 自分でなんとかすることだ。」
ホワイトストームはそう言って、キャンプを出て行った。
「うーん。 ファイヤハートはまだまだ弱いっ!」
吉祥がまた楽しそうに言う。
「いや戦ってないでしょう!? よくそんな誤魔化しかたができたね…。 ていうかなんでそんなに楽しそうなの!!」
「じゃあ戦ってみる? 本気は出せないけど。」
「いいよ。 まだ死にたくないから。」
「まあまあ、術使わなければ俺もだいたいは猫だから。」
「だいたいって・・・。」
「力比べやろうよ!! ケンカじゃなくて力比べ!!」
「・・・僕もう疲れたから寝る。」
「え~。 釣れないなぁ。」
吉祥はわざとらしくため息。
「ま、今度相手してやるよ。」
そう言ってから、大きく欠伸をする。
戦士たちの寝床に入ると、グレーストライプはいなかった。
なんだか寂しい。
そういえば、吉祥が来てから、吉祥とばっかり話している。
もちろん、見習いの訓練の時には見習いと会話するが、吉祥がいれば彼と話している。
というか、彼に振り回されてばかりいる。
明日は何をしようか。 と考えたところで、眠くなってしまい、眠りに落ちた。
ここらへんで、俺の得意… じゃなかった。 僕の弱点のゆるーりgdgdが始まりますwww
なんかもうホントにごめんなさいw
もう面倒だから次話一気に話進めるwww