戦いの始まり
「来た……!!」
リーフプールはそうつぶやいた。
キャンプの壁は壊され、猫たちが現れた生き物の大きさに、呆然と立ちすくむ。
入ってきたホワイトスレットは、地鳴りのような声を発した。
横にいたホーリーナイトとニコルが身構える。
「実際には始めてみたよ…すごい大きさだな」ニコルがそういった。
ホワイトスレットは、〈二本足〉よりも大きかった。
猫の何倍あるのだろう。
猫たちが呆然と見上げていると、ホワイトスレットは近くにいたブルーストームに目をつけたようだった。
ブルーストームが太く大きな前足で突き飛ばされる。
ブルーストームは咄嗟に受身を取ろうとしたが、ホワイトスレットはすばやく、うまくいかず、吹っ飛んで行った。
それが合図だったように、サンダー族の猫たちがホワイトスレットへ襲い掛かる。
スクワーレルフライトが駆け出すのが見えた。
ニコルとホーリーナイトも駆け出した。
リーフプールはブルーストームのもとへいこうとした。
が、ホワイトスレットの後ろ足が目の前に落ちてきた。
リーフプールは立ち止まり、他の道がないかと見回した。
その白い体はキャンプの三分の二を占め、思うように進めなかった。
ひとまず、ホワイトスレットからできるだけの距離を置いた。
ホワイトスレットは、ブルーストームを突き飛ばした後、襲いかかってきた猫たちにまみれていた。
ホワイトスレットは地鳴りのような遠吠えを一声鳴らし、全身を大きく震わせた。
猫たちが振り落とされていく。
そのなかで、ホーリーナイトとニコルがホワイトスレットの背にのり、レッドイヤーが尻尾にかみつき離れなかった。
ホワイトスレットは落ちた猫たちに狙いを定めた。
立ち上がろうとしている二匹の猫に、ホワイトスレットは頭を振り落とし、ひと口でかみついた。
二匹の猫は一瞬悲鳴にも似つかないような声をあげ、血しぶきを上げた。
その血はホワイトスレットの頭に降りかかり、白い毛皮に赤い模様が入る。
リーフプールが息をするのも忘れて目を瞠っていると、ファイヤスターがかけてきた。
「リーフプール!」
リーフプールは振り向いた。
ファイヤスターは右肩から血を流していた。
「ファイヤスター!! その傷…」
「俺のことは気にしなくていい。それより、頼みたいことがある」
リーフプールは猫たちが次々と襲われていく地獄のような風景を横目に見ながら、ファイヤスターの言葉の続きをまった。
「他の部族に応援を頼んで来てくれ。全部の部族に」
そういうと、ファイヤスターはリーフプールの返事を待たずに地獄の中へ飛び込んだ。
リーフプールはすぐに駆け出した。
早く。
早く助けを呼ばなければ。
悔しいが、あんな化け物、サンダー族だけでは太刀打ちできない。
森全体の猫でも太刀打ちできるだろうか。
分からないが、ここで突っ立ってみているだけでは何もできない。自分にできることをしなければ。
リーフプールは自分も皆を助けたい気持ちを抑えて、キャンプを出た。