大集会

 

 

スクワーレルフライトはクラウドテイルの横で森の中を走っていた。

 

その周りにダストペルト、ラシットテイルなど、十匹程度の猫の先頭にファイヤスターが走っている。

 

大集会の島へ向かっているところだ。

 

 

橋を渡り、島の中央へ向かった。

 

においからすると、シャドウ族とリヴァー族はもうきていて、ウィンド族はまだきていないようだ。

 

 

ファイヤスターを先頭にサンダー族が空き地へ入ると、サンダー族の猫はそれぞれほ

かの部族にいる友だちに挨拶をしにいった。

 

スクワーレルフライトはざっとあたりを見回した。

 

リーフプールはシャドウ族とリヴァー族の看護猫が集まっているところへ挨拶しにいった。

 

少し離れたところに、トーニーペルトがいた。

トーニーペルトは少し前、一緒に旅をした仲だ。スクワーレルフライトは足をそこへ向けた。

 

「こんばんは、トーニーペルト」

 

リヴァー族の灰色の猫と話していたトーニーペルトが振り返る。

 

「こんばんは、スクワーレルフライト。元気?」

 

「変わりないわ」

スクワーレルフライトが答える。

 

トーニーペルトが足だけが白っぽい、灰色の猫を見、スクワーレルフライトに紹介した。

「こちらはホワイトフット。リヴァー族の戦士よ」

 

ホワイトフットがスクワーレルフライトに軽く会釈する。

「やあ、初めまして」

 

スクワーレルフライトも会釈を返す。

「初めまして、スクワーレルフライトよ」

 

「今、獲物のことを話していたの」

トーニーペルトがいう。

 

「もうすぐ枯れ葉の季節だものね。だんだん捕れなくなってきたわ」

スクワーレルフライトが答える。

 

「だから、リヴァー族はいいわよねーっていってたの。魚取れるし」

 

「そうでもないよ。枯れ葉の季節は川がほとんど凍っちゃうんだよ」

ホワイトフットがトーニーペルトの発言に答える。

 

 

そのとき、ウィンド族が到着した。

 

そのなかにはクロウフェザーもいた。目が自然とリーフプールへ向く。

リーフプールは気づいていないようだ。

 

「もうそろそろ始まるわね」

トーニーペルトが中央の大木へ向いた。

 

三匹の族長がもう木へのぼり、そこにウィンド族の族長が加わった。

 

シャドウ族の族長ブラックスターが立ち上がった。

 

「この月明かりのもと、大集会を始めようと思う!」

 

 

集まっている猫たちが静まった。

 

シャドウ族の族長が近況報告をする。

 

新しく見習いになった猫、戦士になった猫の名を呼び、空き地からその名をたたえる声が上がる。

 

シャドウ族と入れ替わりにリヴァー族の族長が進み出て、シャドウ族ともそうかわらない近況報告をした。

 

ただひとつ違ったのは、この言葉だった。

 

「戦士のウォーターフットが何者かによって殺されました。リヴァー族はウォーターフットというりっぱな戦士をたたえます。なわばりに、侵入者がいるということになります。リヴァー族はこれからも警戒を続けます」

 

周りの猫たちから悲しげな声が上がる。

 

ウォーターフットは他の部族からも好感を得ていた猫だった。

同じ部族じゃなくても、やはり悲しいのだろう。

 

しかし、そんな猫たちの中で、三匹だけは違う行動をとった。

 

ファイヤスターとスクワーレルフライトとリーフプールだった。

 

ファイヤスターは耳をぴくりと動かし、スクワーレルフライトはリーフプールと目を合わせた。

 

続けてウィンド族の族長が出てきて、同じように報告した。

 

 

ファイヤスターの順番になった。まずは、他の族長と同じように報告をした。

 

そして、一呼吸置いて本題へ入った。

 

 

「数日前、オークファングと見習いのブラックポーが何者かに命を奪われた」

 

「その命とりとなった傷は、猫のつけられる傷ではなかった」

 

普通なら、ここまで詳しくは言うことはない。

しかし、今は緊急事態で、そうもいっていられないのだ。

 

 

「先ほどレパードスターが報告した、侵入者はサンダー族と同じものだろうか」

レパードスターに問いかける。

 

ファイヤスターがそこまで言ったところでリヴァー族の族長、レパードスターが口を開く。

「ウォーターフットも猫に襲われたわけではなかったわ」

 

ファイヤスターがさらに問う。

「それは、どんな傷だったか話していただけるか」

 

レパードスターが冷たい目でフッとファイヤスターを見、一瞬迷い、答えた。

「リヴァー族はこの侵入者がただの侵入者ではないと考えているわ」

 

それだけでも、ただの傷ではないことがうかがえる答えだった。

 

「サンダー族も同じ考えだ。それは、とてつもない脅威だと思う」

 

レパードスターとファイヤスターのやり取りを聞いていたシャドウ族の族長、ブラックスターがそこで口を開いた。

 

「我々のなわばりにも、その侵入者は侵入しているようだ。先日、猫ではない白い毛が発見された」

 

「その白い毛は、サンダー族のなわばりでも見つかった」

 

「リヴァー族も同じく」

ファイヤスターとレパードスターが同意する。

こで、レパードスターがウィンド族の族長、ワンスターに問うた。

「あなたたちのなわばりでは、変化はないの?」

 

ワンスターが口を開く。

「ああ。その白い毛も見あたらないし、被害を受けた猫もいない」

 

ファイヤスターがそれを聞き、口を開く。

「それはよかった。しかし、警戒はするべきだと思う」

 

ワンスターが答える。

「わかっている。三つの部族が証言しているんだ。確かに何かがいるんだろう。これから何らかの処置はする」

 

「話すことはこれで充分じゃないか? まだ、他に報告か話すことがあるか? もうそろそろ雲行きも怪しくなってきたが」

ブラックスターが空を見、提案する。

 

「では、どの部族もその侵入者には警戒しておくことを部族内の猫たちに伝えておきましょう」

レパードスターがそういった。

 

ファイヤスターは、まだ何かいいたそうに口を開きかけたが、声を発さずに閉じた。

 

「そういうことで、今夜の大集会はお開きとしよう」

ワンスターがそういい、大木から飛び降りた。

 

続いてレパードスター、ブラックスターと続き、最後にファイヤスターが降りた。

 

同時に空き地に集まっていた猫たちもばらけ、それぞれ別れの挨拶をしだした。

 

 

スクワーレルフライトも、一緒にいたトーニーペルトとホワイトフットに挨拶をし、サンダー族が集まっている場所へ向かった。

 

途中、リーフプールがクロウフェザーと言葉をかわしているのを見つけた。

スクワーレルフライトは少し離れたところでとまった。

 

「元気だった、リーフプール?」

 

「ええ、元気よ。クロウフェザーは?」

 

「僕も変わりなしだ」

 

「ウィンド族はどんな感じ?」

 

「別に変わりないよ。獲物もまだ取れているし」

 

スクワーレルフライトは近づいて、クロウフェザーに挨拶した。

「こんばんは、クロウフェザー」

 

クロウフェザーが振り向いた。

「ああ、スクワーレルフライトか」

 

「リーフプール、サンダー族はもう集まってるわよ。少し急いだ方がいいかも」

 

リーフプールはサンダー族が集まっているところを見て頷き、クロウフェザーに挨拶した。

 

「じゃ、行くわね」

「じゃあな、俺もいくよ」

 

クロウフェザーはそういうとウィンド族が集まっている場所へ向かって走っていった。

 

「リーフプール、大丈夫?」

スクワーレルフライトはサンダー族の集まっている場所へ向かいながら問いかけた。

 

リーフプールは驚いた顔で振り返る。

「何が? ・・・・・・ああ。あのこと?」

すぐに理解した顔をし、笑った。

 

「大丈夫よ、私はもう大丈夫。そんなこと気にしてたの、スクワーレルフライト?」

 

「だって・・・」

スクワーレルフライトは言葉をにごした。

 

「気にしないで、スクワーレルフライト。もう終わったことよ」

リーフプールはそういうと、話を変えた。

 

「他の部族のなわばりにも、白い毛のはぐれものは入っていたのね」

 

「うん。そのはぐれものは、森全体に関係することなのかも知れないわ」

スクワーレルフライトはそういった。

 

「そいつが、何もしてこなきゃいいんだけど」

スクワーレルフライトは希望を込めてそういった。

 

「うん、そうだといいわよね」

リーフプールは頷いた。

 

リーフプールも本当のことは分かっているのだ。

 

だが、あえて、頷いてくれたのだろう。

 

 

「遅いぞ。おまえたち二匹で最後だ」

 

ファイヤスターがそういい、走り出した。

他の猫たちが続き、スクワーレルフライトとリーフプールも遅れないように走り出した。