消える一点
ファイヤハート、グレーストライプ、シンダーポー、ブラクンポー、最後に吉祥の順にキャンプを出た。
「サニングロックスに向かう。 リヴァー族の縄張りのすぐ近くだから気を付けるんだぞ。」
「分かりました!!」
ファイヤハートが言うと、シンダーポーは真っ先に返事をする。
「つまり、川が近いって事ですか?」
ブラクンポーは冷静に聞く。
「ああ。 でも、川の手前にリヴァー族がマーキングしてるから、そこを越えなければ問題ない。」
グレーストライプが答える。
「ハタネズミを捕りたいです!! まだ食べたことないので!!」
「捕まえたら、まず長老の所に持って行く。 それで礼儀正しくお願いすれば、喜んで分けてくれるだろう。」
「わかりました!! サニングロックスはどっちですか?」
「こっちだ。」
ファイヤハートが走り出す。
シンダーポーが付いていく。
シンダーポーの走った後に、落ち葉が舞い上がる。
その一枚にグレーストライプが飛びつき、地面に押さえつけた。
グレーストライプ、自慢げに鼻を鳴らす。
それをブラクンポーが見ているのに気付くと、慌てて、「あのその… 狩りの練習になるものはむだなく利用することだ。」と言ってごまかした。
吉祥は、その様子を眺めて、師弟の関係を少し羨ましく思った。
吉祥にも、ちゃんと師匠がいる。
いまでも師匠であり、絶対に越えられない。
だが、こうして教えてくれずに、任せっぱなしだった。
直々にやり方を説明することなく、~~やっといて。とだけ言って消えてしまう始末だった。
…それが師匠の作戦で、その作戦のおかげて自分はここまで力をつけているし、さらに伸びることができる。
それでも、というかそのせいで逆に、ああやって仲良く教えてくれることを羨ましく思う。
「吉祥さ~ん! 来ないんですか~?」
シンダーポーの声に我に返る。
みんな坂道を登り切っていて、上の方で待っている。
「今行くよ。」
そう言って坂道を駆ける。
「どうしたんだい?」
坂道を登り切ったところでファイヤハートに聞かれる。
「大したことじゃないよ。 ちょっとだけみんなが羨ましかったんだよ。」
「?」
「その内わかるかもね。 覚えてたら教えてあげる。」
「ごめん。よくわからないよ。」
「うんうん。 分からないもんだよ。 ほら。ファイヤハートも置いて行かれてる。」
グレーストライプ達は、もうすでに坂道の向こうに消えていた。
「ええっ! なんで僕まで!!」
「まあまあ。 サニングロックスまで連れてってくださいな。」
「分かったよ。 この先だよ。」
置いて行かれて少し凹むファイヤハート。
ただ呑気に歩く吉祥。
サニングロックスの手前で、グレーストライプ達は待っていた。
※ ※ ※
"吉祥、根子岳で猫神らが会議をしてる。 お前も呼ばれてるのに変な所で遊んでるな。 早く戻ってこい。"
※ ※ ※
「およ?」
吉祥はトガリネズミに牙を突き立てる直前でその動きを止めた。
トガリネズミはすぐに逃げ出し、岩の下に潜る。
ファイヤハートが首を傾げる。
「どうしたんだ? 吉祥? せっかく捕まえられたのに。 きっと大物だったよ? 吉祥もまだ訓練が…」
吉祥は黙って空を見上げた。
その目が真剣すぎて、思わず言葉を切る。
吉祥は口を開くが、音は鳴らない。
ただ口だけを動かしている。
長い沈黙の後、いきなり吉祥がファイヤハートの方を向く。
「ごめんっ。 少し用事ができた!! 今すぐ行かなきゃ!!」
「え? え? 用事?」
「うん。 ちょっと呼ばれてね。 …スター族様になにか伝言ある? もしかしたら伝えられるかも。」
「はぁ?」
いきなりワケの分からないことを聞かれる。
「え、、 えっと… これからもしっかり見守っていてください・・・ かな…?」
「了解。できれば伝えておく。 んじゃ!」
吉祥は、サニングロックスの岩を軽やかに跳んでいき、一番高い岩に飛び乗り、さらに高く跳んだ。
そして、煙になって消えてしまった。
ファイヤハートが呆然と見ていると、後ろからグレーストライプの声がする。
「あれ? 吉祥君は?」
ファイヤハートは振り返ってから言う。
「消えちゃった。」
タイトル的に深刻な回と見せかけて、ただどっか行っちゃっただけwww
この話は、2巻の例の回ですぜ例の回www
分からなかったあなたは2巻を読み返しましょうww
吉祥が消失する理由が分かるかもしれませんぞw